評価額10億円! 高専生が考えたディープラーニング活用事業の完成度(1/3 ページ)

» 2022年05月20日 16時00分 公開

この記事について

DXに取り組む企業が増える中、AIやディープラーニングを学ぶ人も増えている。ディープラーニングを中心とする技術により、日本の産業競争力向上を目指す 「日本ディープラーニング協会」は、高等専門学校生が日頃培った「ものづくりの技術」と「ディープラーニング」を活用した作品を制作し、その作品によって生み出される「事業性」を企業評価額で競うコンテスト「第3回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2022(DCON2022)」を開催した。日本ディープラーニング協会による寄稿。


 企業の間で活用が広がっているディープラーニングは、学生の研究対象としても大きな盛り上がりを見せている。日本ディープラーニング協会(JDLA)が4月28日から29日にかけて開催した「第3回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2022(DCON2022)」では、高専生が技術・ビジネス面の両面で完成度の高いプランを提案した。

高専生のプレゼンの様子

 審査員となったのは現役のベンチャーキャピタリスト5人。ビジネスの現場でベンチャー企業を評価するのと同じ基準で、各チームの作品を「企業評価額」「投資額」の2点で評価した。最優秀賞に起業資金として100万円、2位には50万円、3位には30万円が与えられた。

「ビジネスモデルまで完璧」

 最優秀賞に輝いたのは、一関工業高等専門学校のTeam MJ。作品名は「D-walk」だ。企業評価額は10億円、投資額は5億円だった。5人の審査員全員が、投資をしたいと評価した。

最優秀賞に輝いた一関工業高等専門学校のTeam MJ

 D-walkは歩行に関するデータを、靴に挿入したインソール型の足圧センサーと、スマートフォンの加速度センサーから取得し、それをディープラーニングに取り込むことで、認知症を発見・予防する。

 審査員が高く評価したのは、ビジネスモデルまで含めた全体の設計だ。認知症の保険を販売している保険会社をD-walkの販売対象とし、被保険者1人当たり月額500円で提供する。被保険者がD-walkを積極的に活用するよう、一定程度D-walkを利用した被保険者には保険料を月額100円値引きする。

 ポイントになるのはMCI(軽度認知障害)と呼ばれる、健常者と認知症の間の症状と判断された人を、D-walkによって健康な状態に戻すことだ。「MCIの状態にある被保険者が、D-walkを使うことで認知症になることを防げれば、保険会社は一時金を払う必要がなくなる」(Team MJメンバー)。このため、保険会社がD-walkに被保険者1人当たり月額500円を支払ったり、保険料を月額100円値引きしたりしても、全体的には現在よりも大きく利益が高まると試算した。

 現在のところ、認知症の保険に入っている高齢者の割合は2.6%に止まるというが、「MCI向けのサービスは既に増え始めており、認知症の保険の市場が今後大きく拡大する可能性は大きい」(Team MJメンバー)。被保険者の子供が、親の代わりに保険料を支払っている割合が40%程度あることにも注目したという。

 審査員の1人であるWiLの松本真尚 共同創業者/ジェネラル・パートナーは「技術的にも凄く面白いし、ビジネスモデルまで完璧に考えているのは、過去のDCON含め初めてだ。DCONのレベルが1段上がったと感じた」と語った。

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