3つ目は、6月にリニューアルを控えているゲームのサブスク「PlayStation Plus」(PSプラス)でしょうか。年間4000億円の安定的収益源の“上積み”……顧客単価のアップがどうなるかでしょう。今回、決算会見でもPSプラスのリニューアルへの期待が言及されました。
また会見では、米マイクロソフト(MS)のサブスク「Xbox Game Pass」と同じように、新作ゲームをPSプラスへ発売日から配信する考えはないのか……という趣旨の質問が出ました。ソニーGの十時裕樹副社長は、直接的な言及を避けながら、新作ゲームの即座の投入は、否定的でした。
「MSと同じように、ソニーの新作ゲームも、発売日同時にPSプラスに配信して」という意見は、ネットで見かけます。コアなゲームファンからすると、低価格で本格派の新作ゲームが遊び放題になるから当然です。
しかし、それはあくまでファンの側の論理。何でもサブスクにすればいいか?というと、ケース・バイ・ケースでしょう。ファンが得をしても、メーカー側、クリエイター側が苦しめば、ウイン・ウインにならないのです。
ゲーム事業でMSはソニーの後手を踏んでいます。そしてMSは、ソニーの売上高の約2倍もあるうえに「超」のつく高収益体質です。ソニーのゲーム事業を切り崩すため、MSがゲーム事業の収益減を覚悟してライバルがまねできないサービスを出すのは、ビジネスとして「あり」です。
しかし、ソニーが今すぐ追随するのが得策かといえば、難しいところ。収益を圧迫しますし、現状は「静観」の方がベターではないでしょうか。もちろん、MSがサブスクの会員数を急伸させて、並んでくれば状況は変わるでしょうが……。
要するにPSプラスのリニューアルで、約4700万人の有料会員数がどう動き、ネットワークサービスの収益がどう変化するかです。ゲーム機のシェア争いと共に、ゲームのサブスクを巡る攻防も注目と言えそうです。
ゲーム、アニメ、マンガなどを主戦場にするフリーランスのサブカルライター。ヤフーオーサー、マンガ大賞選考員。メディア所属時には、決算会見や各発表会に参加し、独自記事なども執筆。20年以上ゲーム業界を中心に取材している。2020年5月、「ドラゴンクエスト」大ヒット連発なぜ? 30年前の伝説の熱狂」でヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞した。「文春オンライン」や「Number Web」(ともに文藝春秋社)などでも記事を執筆。静岡放送などでラジオに出演することも。
ヤフーニュース個人:「河村鳴紘のエンタメ考察記」
Twitter:@kawamurameikou
note:河村鳴紘
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