ソニー決算の3つのポイント 年1800万台出荷計画のPS5に質問集中(2/2 ページ)

» 2022年05月20日 11時40分 公開
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ゲームのサブスクを巡る攻防は

 3つ目は、6月にリニューアルを控えているゲームのサブスク「PlayStation Plus」(PSプラス)でしょうか。年間4000億円の安定的収益源の“上積み”……顧客単価のアップがどうなるかでしょう。今回、決算会見でもPSプラスのリニューアルへの期待が言及されました。

photo 「PlayStation Plus」(出典:公式Webサイト)

 また会見では、米マイクロソフト(MS)のサブスク「Xbox Game Pass」と同じように、新作ゲームをPSプラスへ発売日から配信する考えはないのか……という趣旨の質問が出ました。ソニーGの十時裕樹副社長は、直接的な言及を避けながら、新作ゲームの即座の投入は、否定的でした。

photo 「Xbox Game Pass」(出典:公式Webサイト)

 「MSと同じように、ソニーの新作ゲームも、発売日同時にPSプラスに配信して」という意見は、ネットで見かけます。コアなゲームファンからすると、低価格で本格派の新作ゲームが遊び放題になるから当然です。

 しかし、それはあくまでファンの側の論理。何でもサブスクにすればいいか?というと、ケース・バイ・ケースでしょう。ファンが得をしても、メーカー側、クリエイター側が苦しめば、ウイン・ウインにならないのです。

 ゲーム事業でMSはソニーの後手を踏んでいます。そしてMSは、ソニーの売上高の約2倍もあるうえに「超」のつく高収益体質です。ソニーのゲーム事業を切り崩すため、MSがゲーム事業の収益減を覚悟してライバルがまねできないサービスを出すのは、ビジネスとして「あり」です。

 しかし、ソニーが今すぐ追随するのが得策かといえば、難しいところ。収益を圧迫しますし、現状は「静観」の方がベターではないでしょうか。もちろん、MSがサブスクの会員数を急伸させて、並んでくれば状況は変わるでしょうが……。

photo 米マイクロソフト(提供:ゲッティイメージズ)

 要するにPSプラスのリニューアルで、約4700万人の有料会員数がどう動き、ネットワークサービスの収益がどう変化するかです。ゲーム機のシェア争いと共に、ゲームのサブスクを巡る攻防も注目と言えそうです。

書き手:河村 鳴紘(かわむら・めいこう)

ゲーム、アニメ、マンガなどを主戦場にするフリーランスのサブカルライター。ヤフーオーサー、マンガ大賞選考員。メディア所属時には、決算会見や各発表会に参加し、独自記事なども執筆。20年以上ゲーム業界を中心に取材している。2020年5月、「ドラゴンクエスト」大ヒット連発なぜ? 30年前の伝説の熱狂」でヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞した。「文春オンライン」や「Number Web」(ともに文藝春秋社)などでも記事を執筆。静岡放送などでラジオに出演することも。

ヤフーニュース個人:「河村鳴紘のエンタメ考察記

Twitter:@kawamurameikou

note:河村鳴紘

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