各社がスマホゲームから手を引かないのは、一発当たったときの大きさです。2021年の国内アプリ売上ランキング1位の「ウマ娘」は、推定売上が約1296億円、月平均で100億円以上の計算。これだけの大成功であれば「ウマ娘ほどいかずとも、ウチだって……」という考えがよぎるのです。
一部のコアユーザーに課金を促して高収益を目指すビジネススタイルは変わらず、あらゆるジャンルのゲームがやりつくされている感があります。スマホゲームは、行き詰まり感はあっても、劇的に変えるだけの手は浮かばないというのが現状です。
むしろゲームシステムはそのままに、人気のコンテンツに乗せ換えることで、コストを抑える手法もあります。リスクヘッジはビジネスの常道手段ですが、それ頼みになるとやはり閉塞感が漂うことになります。
コンピュータエンターテインメント協会がゲーム産業に関するデータをまとめた「2021 CESAゲーム白書」によると、スマホゲームの開発費は10億円超、運営費も「月3000万円以上(年で3億6000万円)」という回答もあります。もちろん低コスト運営もありますが、大変な戦いを強いられているのも事実です。
つまり巨額の費用を投じるということは、即座の成果や見通しが求められます。それができないなら「サービス終了」という経営決断も早くならざるを得ません。
人気コンテンツを継続的に露出することが認識されており、そのためには、人気が集まりやすく、手に取ってもらいやすい基本利用料無料のスマホゲームは有効な手段です。ですが、無料ではビジネスは続けられませんから、仕組み的にはサービス終了が来るのは避けられません。
売り切り型のゲームとは異なり、スマホゲームのサービス終了はファンの話題になりやすく、「終わった感」が出てしまい、イメージが傷つきやすい面があるのは気になります。各社の「早い決断」が、人気コンテンツのブランディング、今後の展開にどんな影響を及ぼすのでしょうか。動向に注目が集まりそうです。
ゲーム、アニメ、マンガなどを主戦場にするフリーランスのサブカルライター。ヤフーオーサー、マンガ大賞選考員。メディア所属時には、決算会見や各発表会に参加し、独自記事なども執筆。20年以上ゲーム業界を中心に取材している。2020年5月、「ドラゴンクエスト」大ヒット連発なぜ? 30年前の伝説の熱狂」でヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞した。「文春オンライン」や「Number Web」(ともに文藝春秋社)などでも記事を執筆。静岡放送などでラジオに出演することも。
ヤフーニュース個人:「河村鳴紘のエンタメ考察記」
Twitter:@kawamurameikou
note:河村鳴紘
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