最後の長期要因でも、現在のドル円は「歴史的なオーバーシュート領域」(市川氏)にある。購買力平価の推移グラフがそれだ。
これは両国の物価水準をもとに、同じ物品やサービスが同じ値段で買えるとしたら、為替レートはいくらが適切かを計算したものだ。その分かりやすい例として、英エコノミストが毎年発表している「ビッグマック指数」がある。マクドナルドのビッグマックの値段を世界各国で比較したもので、ビッグマック価格と現実の為替がどのくらいかい離しているかを表している。
グラフを見ると、1970年代から円高方向へと推移してきたことが分かる。これは米国でインフレが進行しモノの値段がすべて上昇してきた一方で、日本は長らくデフレが続きモノの値段が変わらなかった結果起きた。インフレ率が高いのは通貨安要因であり、日米のインフレ率の差は「長い目で見るとドル安要因」(市川氏)というわけだ。
これまで、ドル円実勢レートは消費者物価ベースと輸出物価ベースの間に挟まって推移してきた。ところが、このレンジを突き抜けたタイミングが2回ある。米長期金利が11〜13%まで上昇し日米金利差が拡大した1980年代前半と、現在だ。
「超長期の購買力平価で見ても、かなり足元円安が進みすぎている。これから調整が入っていく動きになるのでは」(市川氏)
最後に、内外の物価格差を考慮した円の実質的な価値である実質実効為替レートの推移を確認しよう。70代以降、貿易黒字の大幅な拡大(円高要因)やプラザ合意によるドル高是正、そして日米貿易摩擦問題の深刻化などで、円の価値は上昇していった。
そして80年代のバブル崩壊を経て、円の強さが景気低迷とデフレ長期化の一因となった。そこから30年をかけて、「実力以上に高く評価されてきた円の評価が修正されてきた」(市川氏)のが現在だ。
こうした背景を踏まえ、市川氏は「1ドル130円は個人的には行き過ぎ。来年、再来年を見たときは、購買力平価からすると円が安すぎる」とした。
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