企業理念の浸透度を、賞与や昇給に反映したい 人事評価の際に起こりうる“トラブル”とはQ&A 総務・人事の相談所(2/2 ページ)

» 2022年05月30日 07時30分 公開
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それでも評価制度に組み込みたい! どうすればいいの?

 であれば一足飛びに評価項目を設計するのではなく、段階的に取り組むことも一案でしょう。例えば最初のステップとして、目標管理による評価の枠組みにおいて目標の一部を企業理念や行動指針に沿って設定させる、という運用から始めてみます。

 この場合、評価対象はあくまで目標の達成度であり会社の価値観そのものの達成度ではないことから、先述した困難は回避できます。また目標設定やその振り返りのたびに、企業理念や行動指針について考える機会を持つことで、浸透を図る効果も期待できます。

 とはいえ企業理念や行動指針の達成度を直接評価・処遇するわけではないことから、浸透に向けた効果は限定的です。そこで次のステップとして、上司の裁量による加点評価の観点に企業理念や行動指針を追加します。評価者や経営の裁量で評価するという前提での運用が機能すれば、評価者と被評価者の間でそこまで厳密に達成度の認識をすり合わせる必要がなくなる分、ハードルは下がります。

 また評価面談のたびに、加点理由について評価者間で検討し目線を合わせていくことで、現場の管理職の間で企業理念や行動指針をチェックする際の観点や基準が徐々に共有化されていくでしょう。

目標の一部を企業理念や行動指針に沿って設定し、面談時に評価するという仕組みも

 そして最後のステップとして、企業理念や行動指針などを人事評価項目に落とし込みます。ここまでくれば、最初のステップにおいて設定された個々の目標や、第二のステップにおける加点時の観点などが、評価項目として具体化するための材料として活用できるでしょう。

 またこのタイミングで、役員同士もしくは評価者を交えて「当社らしさとは?」「今後求めるべき行動は? 人材像は?」などについて対話し、それぞれの考えを言語化することも、よりよい評価項目づくりに有効です。

 今後、時間や場所など働き方が多様化する中、多くの会社において企業理念や行動指針といった会社の価値観の浸透が、これまでよりも重要になってくると思われます。ここでの内容をぜひご参考にしていただければ幸いです。

著者紹介:田中宏明(たなか・ひろあき)

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 (株)新経営サービス 人事戦略研究所 コンサルタント。前職のシンクタンクでは社員モチベーションの調査研究に従事。数多くのクライアントと接するなかで、社員の意識改善、さらには経営課題の解決において人事制度が果たす役割の重要性を実感し、新経営サービスに入社。 個人が持てる力を最大限発揮できる組織づくりに繋がる人事制度の策定・改善の支援をしている。


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