身体の健康と同じように、従業員のお金の健康、つまりファイナンシャル・ウェルビーイングも仕事の生産性に影響するという調査結果があるからです。従業員の仕事の生産性向上という目的においては、ファイナンシャル・ウェルビーイングは健康経営と同列の経営施策ということになります。
手元資金に余裕がない状態で、危機的な状態に陥ったときです。単身者で100万円、四人家族なら200万円を緊急予備資金として持つことをお勧めしていますが、それがない状態で、リストラにあって再就職、大病を患った、自宅が火災で燃えてしまったなどの緊急事態が起こるとファイナンシャル・ウェルビーイングは悪化します。
もう1つは将来的な見通しを立てられていない状態です。子供が生まれ教育資金がかかってくる、自身がセカンドライフを迎える、など、将来必要になるお金に対して、予測を立てて、収支をコントロールできていることが重要です。
従業員を見て経済的な不安を抱えていそうかどうか分かれば企業もアプローチのしようがあるかもしませんが、実際には分かりません(私も人事をやっていますがさっぱり分かりません)。
また、ある調査によるとお金の相談を職場の同僚・上司・部下にしたことがあるという方は1割にも満たないそうです。職場というコミュニティの中ではお金の話をしづらいということもあります。
米ウォルマートでは財産管理のアプリケーションを開発して従業員に使ってもらい、キャッシュフローが芳しくないときには会社側にアラートが出る仕組みなどを導入しています。予期せぬ出費が発生したときに借り入れしてしまい、そこからファイナンシャル・ウェルビーイングが悪化するということが多いからです。
自分で課題感を持てればいいですが、半分くらいの人は課題感自体を持っておらず、アクションに至らない人が大多数です。企業が、ファイナンシャル・ウェルビーイングに主体的に取り組むことが重要でしょう。
確かに給料が多ければお金の不安は少なそうですが、実は必ずしもそういうわけではありません。私たちが普段コンサルティングでお会いするお客さまの中でも、収入が高い割に貯蓄が少なく、将来に対する不安を感じられている方が一定数いらっしゃいます。
こういった方々に共通するのは、支出を意識的にコントロールできていないこと。収入が高くなると生活水準も高くなり支出も増えがちな傾向があります。どんな方でも収支管理をしっかりと行い、貯蓄習慣をつけることはファイナンシャル・ウェルビーイングの大切な要素の一つです。
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