変革の財務経理

「電子取引データの電子保存」 23年12月までの期間に気を付けるべきこと義務化は待ったなし(5/5 ページ)

» 2022年06月02日 12時00分 公開
[研修出版]
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消費税のインボイス制度についても目配りが必要

 電子帳簿保存法に関連する内容として、23年10月から開始される消費税のインボイス制度についても目配りが必要です。

 事業者間取引において発行や受領される請求書などは、今後全般的にインボイスに置き換わります。発行側も受領側もこのインボイスの保存が必要とされますが、紙ではなく電子データでインボイスが発行された場合は、「電子インボイス」として扱います。

 この電子インボイスも保存する必要がありますが、その保存方法は電子帳簿保存法における電子取引と同じ要件になっています。つまり、電子データの保存は、消費税のインボイス制度にも関係することがお分かりいただけると思います。

 ここで強調しておきたいのは、電子インボイスについて「標準化」が進められていることです。会計経理に関係するソフトウェア会社が多数集まって設立された電子インボイス推進協議会によると、22年秋頃を目標に開始する取り組みを進めているとのことです。

 この標準化が進んだ場合、これまでは違うソフト同士では交換できなかった請求情報が、今後は電子インボイスとして交換できることが見込まれ、電子インボイスと電子取引のやりとりが活発化することが期待されます。

 「うちは紙ベースの処理だから、そんなことは関係ない」と思っていても、取引先が事業の効率化を進めた場合はどうでしょうか。取引先から「請求業務を電子化したいので協力して欲しい」と問い合わせを受ける可能性もあります。そして請求情報を電子データとして受け取った場合は、その電子データを保存する必要があります。

 今後、請求業務の電子化に取り組む企業が増えてくることも予想されますので、取引先との関係も見極めながら対応を検討する必要があるでしょう。

 ここまで、電子帳簿保存法における電子取引について、経過措置の期間中に対応すべきことを説明しました。

 話を整理すると、自社で保存すべき電子取引に該当する電子データを洗い出した上で、要件を満たして保存する必要があります。その保存については自社にあった方法を検討する必要があり、規程の整備や社内への周知も必要かもしれません。保存についてシステムを利用するのが適切であるかは、会社の規模や取引の状況にもよります。

 経理においては、まだまだ紙による請求は多く、電子データによる請求は少ないとされています。しかしインターネットを経由した取引は、請求だけにとどまらず、ネット通販でも該当します。

 まずは自社における電子データの状況をしっかりと把握し、今後の対応を検討する必要があるでしょう。

栗原洋介(くりはら ようすけ)/税理士

東京都北区赤羽の税理士。クラウド会計とITツールを活用したい事業主への指導に取り組んでいる。ミニビジネスに役立つ税務・クラウド会計の情報をブログで発信中。「税務研究ノート」で検索。【近況】コロナの影響も長く続いており、私のひそかな楽しみだった台湾旅行も、長らく行けないままで残念です。事務所の周辺にあるレストランやデザート屋さんで雰囲気を味わっています。

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