ここまでエンゲージメント向上施策に対して取るべき流れや企業事例を見てきました。
しかし、人事部が主体的に実施したものの、現場の従業員や管理職が「本当に意味があるのか分からない」と非協力的になったり、施策を実施した人事部も施策に懐疑的になったりと、空回りしてしまう例がよく見受けられます。
この場合、下記の特徴があることが多いです。
これらの失敗を防ぐには、エンゲージメントを向上させるため管理職による中心的かつ効果的な関与が必要で、人事部は管理職にできない領域を支援する役割である認識を持つことが重要です。
それぞれの理由を簡単に整理します。
エンゲージメントの状態には、その従業員の背景、例えば性格やキャリア志向、現在関わっている業務内容等が大きく影響しています。また多くの場合、従業員はチームに属して仕事をするため、チーム環境もエンゲージメントの上下に深くかかわる要素です。
管理職は、仕事のアサインメントや教育によって部下の業務内容やキャリアの調整が図れるとともに、チームの環境を改善していくこともできます。そのため、エンゲージメントを向上させるうえでは管理職の意識が重要といえます。
人事部としてエンゲージメント向上施策に取り組む際はまず、管理職に重要性を理解してもらう必要があります。
管理職の中には、そもそもエンゲージメントは高くて当たり前と思い込んでいたり、従業員の心理状態は仕事のパフォーマンスや成長に関係ないという思考をもつ方もいます。
そのため、自社はエンゲージメントについてどう考えるか、エンゲージメントにかかわる要素は管理職が改善できることを経営メッセージで示し、管理職の積極的関与を促すことが必要です。
前述の通りエンゲージメント向上の主役は管理職ですが、管理職だけでできるわけではありません。
理由の一部は下記の通りです。
そのため、下記の具体例のように人事部のサポートが必要です。
経営層・管理職・人事が三位一体となった対応こそが、従業員のエンゲージメント向上を促進するでしょう。
ここまで、人事領域におけるエンゲージメントの基本から向上のために必要なステップ、具体事例まで紹介しました。
最近では、技術の進歩により無償で使えるツールを利用して、自社のエンゲージメントの測定も可能になりました。つまり、多くの企業で現状の把握と効果測定ができ、独断に偏らないエンゲージメント向上施策を計画しやすくなったといえます。
しかし、客観的なデータがあるからといって一足飛びにエンゲージメント向上につながるものではなく、経営層や管理職からの理解と積極的な関与が欠かせない要素となります。
生産性向上や離職防止といったビジネス上のメリットが期待できる、エンゲージメント向上施策。注意点こそありますが、有意義な施策であることは明白だと考えます。本記事で取り上げた重要なポイントに注意を向けながら、向上へ取り組んでみることをおすすめします。
奈良和正 株式会社Works Human Intelligence WHI総研
2016年にWorks Human Intelligenceの前身であるワークスアプリケーションズ入社後、首都圏を中心に業種業界を問わず100以上の大手企業の人事システム提案を行う。
現在は、タレントマネジメント、戦略人事における業務実態の分析・ノウハウ提供に従事している。
大手法人向け統合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポートの他、HR 関連サービスの提供を行う。COMPANYは、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメント等人事にまつわる業務領域を広くカバー。約1200法人グループへの導入実績を持つ。
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