旅館とホテルを比べてみたい。ホテルはプライベートエリア(客室)とパブリックエリアが完全に分かれるイメージであるが、旅館は、玄関で靴を脱ぐというように、プライベートエリア/セミプライベートエリア/パブリックエリアの線引きが厳格ではない傾向がある。
玄関で靴を脱がないものの旅館といわれる施設は、より観光ホテル的な捉え方ができるように思われる。和室・布団/洋室・ベッドかという話もあるだろうが、“和洋室”はホテルでも旅館でも見られるし、インバウンド活況下で外国人受けを狙ったホテルでは、和室のある施設も激増した。
また最近では、旅館と認知されてきた施設の和室にベッドを入れる動きが散見され、高齢者の足腰にも負担がないとブームにすらなっている。旅館といえば“温泉が条件”というイメージもあるが、温泉のない旅館もあるので一概には言えない。
上記のベッド化の流れもそうだが、ホテルと旅館のボーダレス化を感じる具体例な例を挙げたい。ビジネスホテルブランドとして知られるドーミーインには、サブブランド「御宿 野乃」がある。旅館をテーマとした宿泊施設で“和風ビジネスホテル”と呼称している。
あくまでもビジネスホテルのくくりではある。しかし、玄関で靴を脱ぐ「全館畳敷き」が特徴で、キャスター付きのスーツケースで来訪する際は玄関でキャスターの汚れが拭かれるなど、徹底している。
そもそもドーミーインは“天然温泉大浴場”がアイデンティティーであり、ドーミーインが旅館をテーマにしたブランドを展開するのは自然の流れのようにも思える。ビジネスホテルにも和のいやしをといった狙いであるが、「夜鳴きそば」をはじめとするドーミーインで人気の無料サービスも提供されるあたりに、“ビジネスホテルドーミーイン”を感じる。
旅館の楽しみは朝食という方も多いだろう。そもそもドーミーインは朝食のクオリティーを高めることに注力してきたブランドであり、その点でもドーミーインが和風ビジネスホテルを展開したことは理にかなっている。
ところで、先ほど来ドーミーインを「ビジネスホテル」と書いてきたが、前述のビジネスホテル=宿泊特化型という点でくくれば、確かにビジネスホテルと定義付けられそうだ。ドーミーインでウエディングや宴会はできないし夕食ダイニングといったサービスの提供もない。
とはいえ、宿泊に特化しつつも天然温泉大浴場やサウナをはじめ、シティホテルを凌駕(りょうが)するかのような朝食など、ビジネスホテルの簡素さや低料金、機能性、利便性がフォーカスされてきたイメージの中で、ドーミーインはより付加価値を高めてきたブランドだ。料金も他のビジネスホテルと比較して高めに設定されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング