ドーミーインはビジネスホテルと呼べるのか 業界人を悩ます「くくり」問題瀧澤信秋「ホテルの深層」(3/5 ページ)

» 2022年06月08日 06時30分 公開
[瀧澤信秋ITmedia]

ビジネスホテルを選ぶのは「付加価値」それとも「料金」?

 先日、他の媒体で「ビジネスホテルが付加価値を高めてきたことと、利用客層が伝統的な出張族利用から観光利用へ広がってきたことは相乗の関係にあり、付加価値を高めてきたビジネスホテルはサービスの幅で選ばれるようにもなった」と考察した。

 そうしたところ読者から「付加価値ではなく料金が安いから選ぶのでは?」という感想があった。ここで注意しなくてはならないのは、ビジネスホテルの料金は「大局としてみたら安い傾向にはある」とボカした言い方しかできない点。そもそもダイナミックプライシングといわれるように、繁忙日と閑散日では全く料金が異なる。

 一例として、宿泊予約サイトで、インバウンド活況時の土曜日の東京・新宿エリアの空室を料金順に並べたところ、某有名な宿泊特化型ホテルの料金が外資系高級ホテルを超えていたことがあり驚いたものだ。また、エリアでも異なり、同じブランド・同じ日でも東京都心と地方で料金に差がある経験を持たれている読者も多いだろう。

ドーミーイン (画像提供:ゲッティイメージズ)

 メディアで仕事をしている筆者にとってもこの“料金”は頭の痛い問題だ。自身の経験から、宿泊したビジネスホテルがその時○○円だったからといって、上記の理由からも「そのブランド=○○円」とは書けないのだ。

 表記方法をホテルの担当者へ確認すると、ホテルが設定した「ラックレート(定価)」の表記を指示されることもあれば、閑散期の実勢料金である「最低価格○○円〜」との表記で構わないというホテルもある。

 表記方法はホテルの考え方次第でどちらでも良いと思うかもしれないが、ひとつの企画で複数紹介する場合に気をもむことがある。

 おととし、とあるテレビの企画で3件のホテルを紹介した。うちひとつのAホテルは素泊まりラックレートで、別のBホテルは2食付き最低料金でとの指示。どう考えてもBホテルの方が豪華で格も違うが、結局「素泊まりAホテル」は、「2食付きBホテル」の倍以上の料金表示になってしまった。テレビだけに影響は大きい。

 話を戻すが、ビジネスホテルが選ばれるのは「料金の安さ」というのは、無論そういう傾向にある。ただ「高めてきた付加価値と料金」と同列に論じると混乱を来すことになることを付言しておく。

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