起業のアイデアはあるけれど、仲間がおらず、環境も整っていないので実現できない──。そうした人が事業アイデアを狼煙(のろし)のように上げ、支援者を集め、地方自治体や企業とつながる。そんな取り組み「NOROSIスタートアップ」が発足した。
このほどベンチャー企業のアドリブワークスが立ち上げた。神戸市や渋谷区をはじめ全国7つの自治体、東急、オカムラ、三井住友銀行など16法人、関西大学HACK-Academyといった官民の団体が参画する。
2021年8月から先行して参加している神戸市は「これまで出てきたことのないようなアイデアと出会える豊作の年となった」(同市 新産業部新産業課 西川嘉紀氏)という。具体的にはどんな取り組みなのか。
一般的なアクセラレーションプログラムとの違いは何だろうか。NOROSI主催・全体統括責任者の山岡健人氏(アドリブワークスCEO)は次の3つを挙げる。
NOROSIでは一部の起業家層ではなく、その下に存在する起業のアイデアを持つ“予備軍”を支援する。対象者は150万人ほど、初期市場規模は年間1500億円を見込む。
起業家と呼ばれる層であれば、金融機関や投資家からのファンドを受けやすいが、起業未経験者ではそれは難しい。事業アイデアがあるものの、踏み出せないような人たちを支えるのが、NOROSIだ。アイデアに対して共感を集めるところから、初期の資金調達、自治体や起業との連携、法人化までを一貫して支援する。目的は、上場するような優れた1社の創出ではなく“1万人の自己実現”だ。
NOROSIの要は「triven」(トリブン)と呼ばれる仕組みだ。これは、アイデアに時価を付けるというもの。特徴は以下の3つだ。
チャレンジャーは、NOROSI内の専用コミュニティーサービス「triven」にアイデアを提出する。それに共感した人たちはスキルを提供するサポーター、独自トークンを寄付するファンダーとなってプロジェクトに参加できる。
独自トークンの単位は「トリブン」。50トリブンは550円(以下税込)、105トリブンは1100円、1100トリブンは1万1000円となっている。
まず、チャレンジャーが100トリブンを消費してアイデアを提出する。共感したサポーターは自分のスキルを提供するとともに、手持ちの1〜100トリブンを出資する。出資トリブンが25であれば、チャレンジャーとサポーターの出資トリブン合計は125となり、出資割合は8:2。プロジェクトが成功したときの報酬も、この割合に基づいて受け取れる。
ファンダーがチャレンジャーにオファーするトリブンは純粋な寄付となる。そのため報酬を受け取ることはできない。
このように、どれだけのトリブンが集まったかによって、アイデアの時価が決まり、トリブンでのマイクロ資金調達が行われる。また、別のピッチコンテストで入賞すると5万円の賞金も得ることができ、アイデア実現の資金になる。
地方自治体だけでなく、全国各地のコワーキングスペースとも連携しており、格安で利用できる仕組みも備える。その場所で生まれたプロジェクトが別の地域で実現したとしても、進捗情報などを集約・表示するのは、そのプロジェクトが生まれたコワーキングスペースのページだ。
そのほか同ページには、所属するメンバーやメンター、チェックイン中のユーザーなども表示。チェックインしていれば、プロジェクト発足人に会いに行くこともできる。
trivenは、アイデアの創出、仲間集め、資金集め、プロジェクト立ち上げや進捗状況のPRなど、チャレンジャーが必要としているものを集めたコミュニティーだという。
全国の加盟コワーキングスペースを月15〜60時間使えたり、優秀な人材にダイレクトスカウトメールを遅れたり、プロモーションを行ったりできるサブスクリプションサービス「triven Pass」も合わせて用意する。
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