「スイッチ買ったばかりなのに、もう次のハードが出るの?」 任天堂を悩ます次世代機の投入タイミング妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(1/7 ページ)

» 2022年06月17日 07時00分 公開
[妄想する決算ITmedia]

 決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。「決算書で分かる日本経済」ということで、4回に渡りゲーム企業の決算を取り上げて、日本のゲーム業界の現状と今後について考えていきましょう。

 今回取り上げるのは任天堂です。ご存じの通り「ニンテンドースイッチ(Nintendo Switch)」などのハードウェアも製作していますし、「スーパーマリオ」や「どうぶつの森」などのソフトも製作している日本を代表するゲーム企業です。

(任天堂Webページより)

ハード売上比率50%、海外比率80%

 まずは任天堂がどのような企業なのか確認していきましょう。

 任天堂が特徴的なのは、やはりスイッチなどのハードを作っているところです。売上比率ではハード比率が50%前後となっています。

 また、海外比率は80%弱で推移していて、日本よりも圧倒的に海外の売り上げの方が大きくなっています。

 そしてもう1つ特徴的な点としては、スイッチ向けなどのソフトの大半を自社で作っていることにあります。直近の22年3月期では、自社ソフト比率は78.8%に達しています。例えばソニーのプレイステーションでは、自社ソフトの比率は20%ほどのようですから、大きな違いがあります。

 また、こうしたハードを提供している企業にとってはサブスクリプションによる収益も重要になってきています。オンラインプレイが今のゲームの魅力で、そのオンラインでプレイするためにサブスクリプションに加入する形になっているからです。

 任天堂でも「Nintendo Switch Online」というサービスを展開していて、21年11月時点で利用者は3200万人を突破しています。料金体系は月間300円ほどとなっていて、比較的安い料金設定です。任天堂の商品は比較的年齢層が低めの利用者も多いですから、そういった中でサブスクに関しても料金設定を控えめにしているのでしょう。

 ゲーム企業はヒット作が出るかどうかに業績は影響を受けやすいのですが、こうしたサブスクによる安定した収益源を得られるようになっているのはやはり強みです。

 また、任天堂のソフトにおけるデジタル比率は40%強となっています。これまで取り上げたカプコンやスクエニでは8割〜9割くらいがデジタルだったことを考えると非常に低い水準となっています。

 スイッチではダウンロードしたソフトを保存するメモリの容量が小さいということもありますが、プレゼント需要も影響しているでしょう。比較的低年齢層のプレーヤーも多いため、例えば両親や祖父母からのプレゼントとしてパッケージソフトを購入するケースも多く、実際に任天堂は年末商戦で売り上げが増加しやすい企業です。そういった中でデジタル比率が低いことが考えられます。

 自社でハードも開発していますから、ソフトに関してはロイヤリティーを取られることがないので利益率は高いですが、特に利益率の高いデジタル売り上げが伸びにくいというのは、課題となっていきそうです。

       1|2|3|4|5|6|7 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.