“限界地銀“を食い物に? SBI「地方創生トライアングル戦略」の中身の薄さ「第4のメガバンク」構想の行方は(1/4 ページ)

» 2022年06月25日 07時00分 公開

 2021年12月に新生銀行を傘下に入れたSBIホールディングス(以下SBI)の北尾吉孝社長が5月の決算発表の席上、新生買収の大きな目的でもある“限界地銀”再生策としての「地方創生トライアングル戦略」を公表しました。

photo 「地方創生トライアングル戦略」のイメージ図(SBIホールディングス公式Webサイトの資料を参考に編集部作成)

控えめな宣言に終始の北尾氏 背景に地銀経営への危機感

 「戦略」公表とはいえ精緻な具体策を提示したわけではなく、新生銀行の買収確定時にも同じような話が出ていた「SBIグループのプラットフォーム、新生銀行の機能、これまで築いた地銀ネットワークを結びつける」というものです。

 “限界地銀”支援においては、これまで「第4のメガバンク」を目指し、派手な打ち上げ花火を上げてきた北尾社長ですが、今回は派手な看板にはカバーをかけ「SBI・新生銀行・地銀の3者の協力体制の下で、地銀を通じた地域活性化を目指す」という控えめな宣言に終始しました。

photo 21年12月にSBI傘下になった新生銀(出典:SBI公式Webサイト)

 今回の「戦略」公表では、傘下に収めた新生銀行の仕組み金融などのノウハウを生かしつつ、提携地銀経由で地方の成長分野への投資や、究極は「売りに出た銀行株を新生銀行が買い取ることもあるかもしれない」(北尾社長)と、新生銀行を地銀再生の中核に据えて対地銀戦略を展開していくという考えに言及してはいます。

photo 新生銀行の店舗(出典:同行公式Webサイト)

 その一方で、地銀再生に関して毎度“破壊力”に富んだ発言で注目を集めてきた北尾氏にしては、目新しさを感じさせない地味な話に終始した印象であり、若干の違和感が漂っていました。

 その背景には、足元で地銀経営は新たな危機に瀕しつつあるということがあるとみられます。大きな要因は、相次ぐ米国金利の利上げによる外債の急落です。地銀は長期にわたる国内のマイナス金利政策で収益環境が苦しい中、国債の利回りも低下したことでここ数年外国債券での余剰資金運用を積極化してきました。

 米国金利の上昇で外債は下落を続け、体力のある地銀は早めに損切りすることで大きな損失になる前にリスク回避を図ったものの、収益基盤の弱い地銀は外債価格が下がろうともとりあえず持ち続ける以外になく、「その他有価証券評価損」が急拡大しているのです。

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