西武鉄道、ホーム柵にひと工夫 駅員手作りの装飾に反響CS(顧客満足)のさらに先へ(1/2 ページ)

» 2022年06月26日 08時30分 公開
[濱川太一ITmedia]

 線路内への転落を防ぐため、駅のプラットフォームに設置が進むホームドアやホーム柵。その一角を、駅係員の遊び心で彩った手作りデコレーションが、密かな話題となっている。西武鉄道の所沢駅(埼玉県所沢市)。利用客に季節感を提供したいと手作りの装飾を始め、今ではちょっとした撮影スポットになっている。専門家によると、こうした駅係員など現場レベルによるCD(カスタマーディライト・顧客感動)向上に向けたユニークな取り組みが近年、増えてきているという。

新学期のシーズンに合わせて教室の中を模したデコレーション。段ボールなど駅内にある材料を使って駅係員が手作りしている(提供:西武鉄道)

 所沢駅1番ホームの上り(西武新宿方面)側。ホーム柵の一角に棚をしつらえた箇所がある。中には箱庭のようなミニチュアを設置。クリスマスや節分をイメージした装飾や、「卒業おめでとう」「入学おめでとう」といったメッセージ、沿線で開催されるイベントに関連した装飾などを、季節に合わせて展示している。

2020年10月に所沢駅1番ホームに設置されたホームドア。当時、同鉄道の埼玉県内の駅では初めての設置だった(西武鉄道のニュースリリースより)

 「コロナ禍で行動が制限され、社会全体の明るさが失われつつあるように感じていました。地域とともに歩む企業として、駅構内を活用してお客さまとつながり、コロナ禍でも季節を感じてほっこりしてもらいたいとの思いから始めました」と西武鉄道広報部の森川颯太さんは話す。

駅係員たちの心境にも変化

 装飾の手作りを始めたのは2021年10月。最初はハロウィンの装飾だった。段ボールや折り紙など、主に駅にある材料を活用して制作。駅係員2〜3人で業務の合間に作成している。テーマの構想から完成までには3日から1週間程度かかる。これまでに主に11作品を作ってきた。

2021年10月に初めて展示したハロウィンをテーマにしたデコレーション(提供:西武鉄道)

 「装飾したホーム柵の前で写真を撮っている方や、子どもたちが中を一生懸命のぞいているのを見かけると、制作冥利に尽きます」と森川さんは話す。

 ホーム柵の装飾を始めてから、駅係員の心境にも変化が生まれたという。これまで受け身の姿勢だった駅係員が、「こんなことはできますか?」と積極的に発案する場面が増え、職場全体が活性化されてきたという。

西武鉄道の6000系電車のデビュー30周年を祝うデコレーション(提供:西武鉄道)

 SNSを中心に話題が広まっていることに対し、「率直にうれしいです。次回作に力が入るとともに、普段の接客業務にも活力が沸きます」と森川さんは話す。

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