むしろ客数が増えた! 「餃子の王将」の値上げ戦略が大成功した理由業績も絶好調(2/4 ページ)

» 2022年06月27日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

外食産業の数字と比較しても高い

 餃子の王将と外食産業全体の数値を比較します。21年4月から22年4月までの月別売上高、客数、客単価を見ると、外食産業は全体的に数字が伸びた1年だったことが分かります。

 21年の夏は緊急事態宣言が発令されたこともあり、それまで回復しつつあった売り上げが再度落ち込みました。飲食店の営業に制限がついたことで、客数が大きく落ちたことが原因です。

日本の外食産業、業態別売上高

 餃子の王将もこの時期は売り上げを落としました。しかし、外食産業全体が8〜11月の4カ月連続で売り上げを落としている一方で、餃子の王将は8月、9月の2カ月しか売り上げを落としていません。

 21年8〜11月の客数は外食全般と同様に落ちているのですが、客単価を伸ばすことで売り上げを確保したのです。これは新店を含まない直営既存店の売り上げでも同様です。

 客数を落としても、客単価を上げて売り上げを確保した餃子の王将。この1年、同社は何に力を入れてきたのでしょうか。

3つの打ち手

 同社は次の3つの打ち手によって売り上げを伸ばすことに成功しています。

餃子の王将が強化したもの(出所:筆者作成)

 1つ目は、テークアウト・デリバリー強化です。

 筆者の事務所の近所にある餃子の王将も、21年からテークアウト・デリバリーサービスが始まりました。私も何度か利用しましたが、いつも店前にはデリバリー配達員の行列ができていました。同社では20年3月時点にはデリバリー対応店舗は76店舗しかありませんでしたが、21年3月には413店舗、22年3月には560店舗と2年で約8倍にまで拡大しています。22年3月期の期末店舗数は734店舗ですから、およそ8割の店舗がデリバリー対応しています。このスピード感が直接、テークアウト・デリバリーの売り上げ増に結び付き、全体売り上げを押し上げることにつながりました。

王将フードサービス、損益計算書

 22年3月期のテークアウト・デリバリーの売り上げは302億円です。前年比22%の伸びです。すでに全社売り上げの35%にまで拡大し、結果的に客単価を1042円から1066円と24円伸ばしました。22年5月には1095円とさらに29円伸ばしています。同社にとってこの強化策は見事にはまったといえそうです。

 また、21年には東京・池尻にテークアウト・デリバリー専門店「ジョイナーホ」をオープンさせています。必ずしも立地は良くないのですが業績好調です(ちなみに名前のナーホは、餃子の王将用語で「持ち帰り」という意味)。同業態であれば、駅前立地ではなくとも売り上げをあげることができるため、同社の新しい成長業態として力を入れていくでしょう。

ジョイナーホ 池尻大橋店(筆者撮影)

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