東京駅からの新幹線「西行き」「北行き」は、なぜ戦略が異なるのか最適化を目指す(2/4 ページ)

» 2022年06月29日 08時04分 公開
[小林拓矢ITmedia]

「西へ向かう新幹線」のシステムと戦略

 「西へ向かう新幹線」は、東海道新幹線を中心としたシステムとなっている。ビジネス戦略も、東海道新幹線が中心だ。

 東海道新幹線は「N700A」と「N700S」の16両編成が中心となっており、東京〜名古屋〜新大阪を速達輸送する「のぞみ」がメインのダイヤと、はっきりと決まっている。「ひかり」は1時間に片道2本程度、「こだま」も1時間に片道2本か3本。しかし「のぞみ」は、最大1時間に12本運行ができる。「のぞみ」を中心に、東名阪を最短時間で結ぶことがメインのシステムとなっている。

東海道新幹線「こだま」

 そのシステムに適合したサービスが「エクスプレス予約」だ。新幹線のみの乗車を基本としたネット予約システムで、アプリの使い勝手は多くの人から高評価を得ている。年に何度も利用する乗客をターゲットとしており、その人数の多さに合わせてすべてがシステム化され、多くの「のぞみ」を供給して使いやすくすることを基本戦略としている。

 その戦略を縮小したのが、山陽新幹線や九州新幹線である。新大阪〜博多間は「のぞみ」がやはりメインであり、東京方面と直通している。新大阪から山陽新幹線だけを利用する人もいるものの、東京との直通を何よりも大切にしている。こちらでも「のぞみ」は、16両編成である。東京〜新大阪〜博多間を高速で行き来し、さらには新大阪〜博多間の主要駅を行き来する人のために、「のぞみ」は設定されている。

 だが山陽新幹線での「のぞみ」は、東海道新幹線とはちょっと異なる。主たる停車駅のほかにも、列車によって姫路、福山、徳山、新山口に停車する。ここでは、完全に主要駅間の速達列車とするわけにはいかないのだ。

 一方、新大阪からの目線だと対九州のルートがどうしても必要になる。そこで「みずほ」「さくら」といった山陽新幹線と九州新幹線の直通列車が必要となる。

 「みずほ」は「のぞみ」に相当し、下り8本、上り8本しかない。熊本や鹿児島中央と、新大阪を結ぶことをメインとした列車だ。一方「さくら」は本数が多く、熊本から先は各駅に停車する列車もある。「みずほ」の少なさを補っている。

 東京から博多までは16両編成の新幹線が目立つものの、山陽新幹線区間だと「こだま」で8両編成の車両があり、九州新幹線では8両編成と6両編成の車両しかない。東京から乗り継いでいくと、編成が短くなっていくことが分かる。

「エクスプレス予約」(出典:公式サイト)

 しかし、そんな「西へ向かう新幹線」でも、チケットレスサービスは「エクスプレス予約」で共通のシステムとなっている。東海道、山陽、九州は、区間によって異なる列車を走らせても、あくまで1つの「エクスプレス予約」でまかなえるサービスを提供している。全体的に整ったサービスを提供し、中心となっているのは、JR東海の東海道新幹線である。

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