総務人事面ではどうだろうか。勤怠管理には20年2月に導入したTeamSpiritを使っている。
「スプレッドシート管理から脱却して労務管理を実現するために導入した。勤怠と工数がいっしょに管理できる点や、ダッシュボードの使い勝手を評価している」(人事を担当する井上亜美氏)
勤務時間だけでなく、どんな作業にどのくらいの時間がかかったのかという工数を併せて入力できるのがTeamSpiritの強みだ。もともとは開発工数確認を目的としていたが、意外な副次効果もあった。在宅勤務が増える中、勤怠記録というのは後回しにされがちだ。ところがそのリアルタイム打刻率が上昇したのだという。「健康管理という理由での打刻促進には限界がある。工数管理の目的を伝えることが打刻率改善の一助となった」(井上氏)
労務管理の書類手続きについてはSmartHRを利用。もともとは他の人事評価システムを使っていたが、マスター情報の二重登録がネックとなり一元管理できるSmartHRへ変更した。さらに、人事評価についてもSmartHRを活用している。
また「ピアフィードバック」を行う際に「『一次評価者』という表記が出てきてしまう。そういう記載が出てこないようにしたかった」(井上氏)という点も重視したところだ。上下関係を匂わせるような表現を排除し、スムーズなコミュニケーションを実現したいと考える配慮が感じられる。
昨今SaaS導入が進む法務周りでは、契約審査にLeCHECKを使っている。導入は22年2月と最近だ。「なぜその修正が必要なのかの説明が詳しく分かりやすい。これまで目視で対応していた文書比較が自動的にできるようになり重宝している」(カケハシ)。
カケハシに限らずだが、各バックオフィスSaaSの導入時期は最近の場合も多く、この市場がまさに今立ち上がろうとしている時期だということが感じられる。また、各社ともに比較的容易にサービスを切り替えている。チャーンレートをいかに抑えられるかが、今後のSaaSビジネスにおいてのキーとなりそうだ。
バックオフィスSaaS全般におけるカケハシの課題感は、大きく2つある。1つは導入している複数のSaaSが同様の機能を持っている場合が多いということ。それぞれで最良の機能を持ったSaaSで固めるという方針もあるが、同じブランドのSaaSでそろえれば、機能面で見劣りする部分があっても、従業員から見た使い勝手は上がる。バックオフィス部門としては、従業員から見た利便性を意識しており、方針が分かれるところだ。
もう1つは、各SaaSが多機能なために使い込みに時間がかかる点だ。昨今、単に紙でのオペレーションを代替するだけでなく、そうして集めたデータを集約、分析できる機能を備えたバックオフィスSaaSが増加している。こうしたデータをどう活用するかは、まだ習熟が待たれるところだろう。
当連載では、各社がどんなSaaSをバックオフィスに導入しているのか、その実態を聞く。自社の利用しているSaaSについて話していただける企業があったら、ぜひ編集部まで連絡してほしい。
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