実は今から2600年前のインドに、他人の評価を気にしながら生きるのではなく、自分の目的に向かって、意識を集中する生き方を提唱した人がいます。それがお釈迦さま、ブッダです。今回は、『ブッダの真理のことば 感興のことば』(中村元訳 岩波文庫)の中から、SNSから心を守るためのヒントとなる、ブッダの言葉を3つ、紹介いたしましょう。
「何ものかに依ることが無ければ、動揺することが無い。そこには身心の軽やかな柔軟性がある。行くこともなく、没することもない。それが苦しみの終焉であると説かれる」(感興のことば 第26章 20)
SNSで「いいね」をもらうために、他人の発信に「いいね」する。周囲から取り残されてしまう気がする。常にフォロワー数が気になって仕方がない。SNSを常用していると、発信する側も受信する側も、常に他人の目を気にしなければならなくなります。にも関わらず、SNSをチェックしないと漠然とした不安に駆られます。これはもう、立派なSNS依存です。
SNSに依り続ければ、動揺することが増えます。気が付けば、身心が重くなり、柔軟性を欠くようになります。他人の意見や趣味嗜好に刺激され、あちらこちらへと歩き回り、ついには疲れ果てて、身心が没してしまうことさえあるのです。
依存を離れるためには、
私の寺では、入門したての修行僧たちには、“スマホ断ち”をしてもらいます。若い修行僧ほど、最初は「世の中から置いていかれる」感に襲われ、不安に駆られます。けれども次第に、いかにそれまでSNSに縛られ、影響されてきたかに気付き、本来の自分を見つめられるようになります。
SNSに触れる機会と時間を減らす。あるいは思い切って断つことによって、SNSへの依存を離れることができます。
「アトゥラよ。これは昔にも言うことであり、今に始まることでもない。沈黙している者も非難され、多く語る者も非難され、すこし語る者も非難される。世に非難されない者はいない」 (真理のことば 第17章 227)
「ただ誹(そし)られるだけの人、またただ褒められるだけの人は、過去にもいなかったし、未来にもいないだろう、現在にもいない」(真理のことば 第17章 228)
「黙っていても非難され、多く語っても非難され、少し語っても非難される。ただ誹られるだけの人、またただ褒められるだけの人は、未来にもいないだろう」というブッダの予言通り、ブッダ存命の時代から2600年の時を経た現代においても、人々の他者非難が止むことはありません。
私もYouTubeで『大愚和尚の一問一答』という、悩み相談番組を配信していますが、登録者が増え、広く人々に知られるほどに、非難と称賛が共に増えていきます。しかし、ブッダがアトゥラに伝えた先の言葉を心に刻んでいる私が、それらの非難や称賛に一喜一憂することはありません。
もしそこに批判的なコメントが残されれば、冷静に、理性をもって観察します。すると見えてくることがあります。それは、「よく観ず、よく聞かず、よく知らず」に非難してくる人がほとんどだということ。会ったこともない、話したこともない、よく知らない人が、その発信の文脈や内容をよく理解しないまま発した批判に、動じる必要はないのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング