リテール大革命

ネットスーパー戦国時代 イオンに西友、Uberも参戦 勝ち抜くために必要なのは?配送料が一つのカギに(2/3 ページ)

» 2022年07月29日 08時00分 公開
[畠山誉道ITmedia]

テクノロジーのイオン、配送料のUber

 19年にイオンがオカドと提携し、物流センターの建設をスタートしたことに象徴されるように、黒字化を狙う場合、効率化の追求によってコストカットを実現するという考え方は重要だ。イオンの巨大物流拠点においては、ロボットが24時間稼働し、50点の商品を約6分でピッキングから配送準備まで完了させられるという。

 楽天と西友が協働で運営する「楽天西友ネットスーパー」も専用物流倉庫を拡充する見込みであり、千葉県柏市、神奈川県横浜市の拠点に続き、千葉県松戸市にも新センターを構える動きだ。配送エリアの拡大、受注可能件数の増大に加え、大幅な省人化を企図する。以前からネットスーパー各社はセンター出荷型の採用や店舗バックヤードの効率化に取り組んできた。楽天西友ネットスーパーは20年1月、新たに設置する物流センターで約60%の省人化を図るとの方針を示している。

楽天西友ネットスーパー(画像:楽天西友ネットスーパー公式Webサイトより)

 Uber Eats Marketの存在にも注目が集まる。Uber Eatsの新しい食品・日用品専門店としてその第1号店「日本橋兜町店」が、 21年12月に営業を開始した。Uber Eatsの配達パートナーが、注文を受けた商品を自社の倉庫からピックアップし、指定の場所まで配達する仕組みだ。取扱商品は約1100点以上。食品、美容・衛生用品、日用雑貨に加え、生鮮食品や冷蔵・冷凍食品をそろえている。営業時間も午前7時〜午前0時までと長い。また、エリアを限定しているという理由が大きいものの、注文から最短30分程度で商品が届くという利便性も持ち合わせている。22年7月現在、日本橋兜町店に加え、世田谷赤提店、神宮前店と東京都内で配達網を拡大している。

 日本では配送料を支払う価値観が十分に根付いていないことが、大手ネットスーパー各社にとって黒字化を阻害する一要因になっている。しかし、Uber Eatsのプラットフォームを適用する以上、配送料に対する心的ハードルが低い若年顧客層を既に囲い込めているのは大きな強みといえるだろう。一方で中年層、高齢者層へのサービス普及が困難であることも予想される。一般的なネットスーパーの利用者に対して同じようなビジネスモデルが通用するわけではないというのは、注意が必要なポイントだろう。

Uber Eats Marketの強みは配送料に対する心理的ハードルが低いことが挙げられる(画像:プレスリリースより)

 店舗でのオフライン購買でもなければ個別宅への配送でもない、「第3の買い方」を提唱し、ビジネスモデルの転換を図るのがクックパッドだ。コンビニ、マンションだけではなく、オフィスやカラオケなどにも設置された共同の「冷蔵庫」に商品を届ける生鮮食品ECを立ち上げた。アプリで注文した商品が各地に設置された「マートステーション」に配送される仕組みで、ユーザーは指定したマートステーションで商品を受け取る。個別宅への配送は配送網の整備という点で煩雑さを伴う。それを取り除くことで「配送料無料」を実現した。

 マイナビニュースが運営するTECH+の21年12月14日付けの記事によると、20年の1年間だけで利用者数は10倍以上に増加したという。

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