「配送料=有料」という考え方が一般的であり、同時に生鮮食品へのこだわりもそれほど強くない海外諸国では、かねてよりネットスーパーの利用割合も大きい。日本と比較して10倍以上の市場を持っている国も多く、米国、英国、中国などはネットスーパー先進国といえる。近年では消費形態の発展が進み、ネットとリアルが融合した買い物も根付きつつある。
米国では車文化を背景に、ドライブスルー専用スーパーが台頭する。14年にウォルマートが「ウォルマート・ピックアップ・グローサリー」を、17年にはアマゾンが「Amazon Fresh Pickup」を立ち上げた。指定した時間にドライブスルーで前もってオンライン決済した商品を受け取ることができる仕組みだ。Amazon Fresh Pickupでは商品1点から注文が可能であり、普段の買い物と変わらない気軽さで利用できる。
中国ではアリババがその圧倒的な物流網を生かし、次世代食品スーパー「盒馬鮮生(フーマ―フレッシュ)」を運営している。盒馬鮮生では、店頭に並ぶ商品の全てにバーコードがついており、アプリを通じてあたかもネット通販で買い物をするように配送を依頼することができる。注文から最短30分で自宅に届くため、その利便性は圧倒的であり、「生鮮食品は自分の目で見て選びたい」という消費者の要求も十分に満たす。アプリからの再注文も手軽であり、商品や配送の質に満足した消費者を囲い込むことで、オンラインでの購買にもつなげている。オンラインとオフラインを融合したOMOサービスの代表格といえるだろう。
先に挙げたように、日本の消費者の特徴として「生鮮食品の品質へのこだわりが強い」「配送料を支払う価値観が十分に根付いていない」ことが挙げられる。またミニスーパーや24時間営業のコンビニエンスストアが充実しており、いつでも好きなタイミングで購買ができる環境も整備されている。そもそものEC利用率も、欧米や中国に比べればまだまだ低い水準であり、ネットスーパーの定着は依然として困難である。
もちろんイオン×オカドの例で示したように海外のノウハウを柔軟に取り入れることは重要だが、海外で成功したビジネスモデルを単純に転用すればいいという幻想は既に打ち砕かれており、市場の性質をしっかりと捉えることができなければ収益化は遠い。
消費者の生活もある程度はコロナ以前に戻りつつある中で、ネットスーパーを単なる「ブーム」で終わらせないためには、オペレーションの効率化や付加価値の向上により、コロナ特需に頼らない形での黒字化を追求することが肝要である。各社の今後の取り組みに注目したい。
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