消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が令和5年(2023年)10月1日に導入されます。前回に続き、インボイス制度開始後の消費税計算では何に注意すべきなのか、売り上げにかかる消費税額の計算はどのようになるのか──など、インボイス制度の中身をQ&A形式で解説します。筆者は税理士の山口拓氏。
A19 適格請求書保存方式における税額計算は、現行の区分記載請求書等保存方式と同様に、全ての売り上げ及び仕入れについて税率の異なるごとに区分し、税額計算を行うことになります。
A20 原則的には割戻し計算、特例で積上げ計算、そしてこれら2つの併用という計3つの方法があります。
課税売り上げにかかる消費税額は、原則として割戻し計算によって算出します。税率ごとに区分した課税期間中の課税資産の譲渡などの税込価額の合計額に、108分の100または110分の100を乗じて税率ごとの課税標準額を算出し、それぞれの税率(6.24%または7.8%)を乗じて課税売上にかかる消費税額を算出します。
適格請求書発行事業者が、相手方に交付した適格請求書などの写しを保存している場合には、これらの書類に記載した消費税額などの合計額に100分の78を乗じた金額を課税売上にかかる消費税額とすることができます。ただし、適格簡易請求書を交付する場合において、記載事項のうち適用税率のみを記載し税率ごとに区分した消費税額などを記載していないときは、この方法により計算することはできません。
課税売り上げにかかる消費税額
=適格請求書などに記載した消費税額等の合計額×78/100
課税売り上げにかかる消費税額の計算は、取引先ごとに割戻し計算と積上げ計算を分けて適用するなど併用することができます。
A21 原則的には積上げ計算、特例で割戻し計算、そしてこれら2つの併用という計3つの方法があります。
交付を受けた適格請求書などに記載された消費税額などのうち課税仕入れなどにかかる部分の金額の合計額に、100分の78を乗じて算出する方法です。
課税仕入れにかかる消費税額=適格請求書などに記載した消費税額などの合計額×78/100
課税仕入れの都度、課税仕入れにかかる支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となる場合には108分の8)を乗じて算出した金額(1円未満の端数につき切捨てまたは四捨五入)を仮払消費税額などとして帳簿に計上している場合に、その金額の合計額に100分の78を乗じて算出する方法です。
課税仕入れにかかる消費税額=帳簿に記載した仮払消費税額などの合計額×78/100
税率の異なるごとに区分した課税仕入れにかかる支払対価の額の合計額に、110分の7.8(軽減税率の対象となる場合には108分の6.24)を乗じて算出した金額の合計額を、課税仕入れにかかる消費税額とすることができます。ただし、この特例により課税仕入れにかかる消費税額を計算することができるのは、課税売上にかかる消費税額を原則の割戻し計算で行っている場合に限られます。
課税仕入れにかかる消費税額の計算は、請求書等積上げ計算と帳簿等積上げ計算は併用することができますが、これらの方法と割戻し計算を併用することはできません。
消費税専門税理士。また「窮地にある中小企業を1社でも多く救いたい」との使命感を持ち、売り上げアップや経営助言など中小企業に特化した支援を積極的に行っている。さらに、顧問先の税務調査の負担軽減のため税理士法上の書面添付制度を活用し、平成30年度には税務調査省略割合100%の実績を上げている。https://www.yamaguchitaku-office.com/
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