価値を高めるためには、それに見合った価格に変えていかねばならない。それを、ういろはできていないのではないかと英里さんは指摘する。
「私がこの会社に入ったとき、棹ういろは1本350円でした(現在は486円)。名古屋の他のお菓子屋さんと無意識のうちに価格競争をしてしまっているのです。ちなみに、虎屋さんのようかんだと、同じ分量で1500円くらいします」
また、量や見た目を重視するという名古屋の文化の影響もあり、以前は7本セットの棹ういろを販売していた。それでいて価格は3000円程度だった。
価格設定については、社員とも話し合うようになった。
「ういろは一つ一つ手作りで、さらに蒸すための光熱費もバカになりません。にもかかわらず、こんなに安く売っていいのかと討論したこともあります。工場で働く社員たちにもきちんと還元してあげたい。そのためにはういろ自体の価値を高めて、価格を上げていかねば」
英里さんが手本にするのは虎屋のようかんだ。
「ようかんも昔はそんなに高く売っていなかったと思いますが、時代とともにきちんとデザインなどを考えられて、商品ブランドを作っていったはず。それが価格にも反映しています。大須ういろは長い間それができていませんでした」
もちろん、ういろは素朴な菓子で、高級感のある細工菓子などとは違う。やたらと高くすればいいというわけではない。でも、今の適正価格にも合っていなくて、安くたたき売りをしている状態ではないかと英里さんは嘆く。
「ウイロバーは500円で発売しました。すごく手間がかかっている商品なのにその価格が適正なのかと思いましたが、量が少ないとか、そんな値段で売れるわけないと言われたこともあります。今は756円になりましたが、それでも売れ続けています」
隣に並んでいる商品と比べるのではなく、誰に何と言われようが、真面目に作っている和菓子だと自信を持てることが大切だとする。
「棹ういろを1本1000円で売れるように、きちんとブランディングしていこうねと、ことあるたびに皆で話しています」と英里さんは力を込める。
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