「キラキラして写真映えするー!」
「見た目は緑のいくら!」
静岡市に本社のある食品メーカーが、着想から約10年の時を経て世に送り出した商品がSNSで“バズり”、品薄状態が続いた。その商品とは、これまでに累計34万個を売り上げる「わさビーズ」だ。
製造・販売するのは、静岡名物「わさび漬け」の老舗メーカー、田丸屋本店である(前編「“昭和モデル”を壊して静岡を変えたい わさび漬け大手・田丸屋本店の意思」を参照)。
わさビーズは、主に料理のトッピングとして使われるわさび調味料だ。冒頭に紹介したSNSの投稿にもあるように、緑色のいくらのように見える。2018年10月に業務用で発売したところ、見た目のインパクトもあって、試食会や展示会などで好評を得て、一般消費者からも個人向けに販売を求める声があった。そこで急きょ、同年12月に市販用の商品も売り出すことを決めた。
発売直前に同社の公式Twitterで告知したところ、1万4000を超える「いいね」が付いた。リツイート数も1万以上となった。発売後しばらくは入手困難となり、ネットでは転売騒動が起きるほどの過熱ぶりだった。
19年6月には工場の生産ラインを増強し、月間3万個を製造できる体制にした。「一時期と比べて落ち着きました。今は飲食店やパーティーで使ってもらうなど、リピートする手堅いお客さんがつき始めています」と、田丸屋本店の望月啓行社長は語る。
先述したように、わさビーズはもともと、業務用に開発された商品だった。その背景には、既存のビジネスモデルを変革しなければならないという、同社の危機意識があった。
146年前の創業以来、主に個人相手に商売をやってきた田丸屋本店だが、これから先も会社が存続するためには、同じことをやり続けていては厳しいと感じていた。ビジネスを根本から変えなくてはならない——そう決意した上での挑戦だった。
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