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販売数は34万個超え! 静岡名物「わさび漬け」の老舗メーカーが、ヒット商品「わさビーズ」を開発できた理由変革への危機意識(3/4 ページ)

» 2021年08月20日 05時00分 公開
[伏見学ITmedia]

競合がひしめき合うB2B市場に飛び込む

 今後もB2C(消費者向け)の新たなヒット商品を生み出しつつも、会社の軸足としてはB2B(事業者向け)のビジネスをより強化していきたいと望月社長は言う。

 「わさび漬けは1889年に東海道本線・静岡駅の開業で火が付きました。旅行者などに買っていただき、全国に広まったという経緯があります。140年以上、B2Cマーケットを開拓してきましたが、わさび漬けがダウントレンドになった今、経営の方向性を変えていくのは必然です。B2B事業をもっと伸ばしていきたい」

現在のJR静岡駅

 B2Bにおいては、例えば、ローソンが地域限定で販売する「わさびツナマヨネーズおにぎり」で具材が採用されるなど、少しずつ取引は増えている。しかしながら、B2B市場はレッドオーシャンで、競合がひしめき合う。

 「わさび関連の事業者はたくさんあります。例えば、レストランなどに卸す粉わさびのメーカーは多く、彼らは高い技術を持っています。B2Cでは、田丸屋本店というブランド力が通用しますが、B2Bだとそれはあまり関係ありません。どうやって既存のメーカーと、差別化して、付加価値をつけていくかが課題です」

 その中で田丸屋本店の特色をどう生かすのか。

 「長年の商売で培った、わさびの仕入れのネットワークがあり、農家とも緊密に連携が取れています。顧客のニーズに合った、質の高い素材をすぐにそろえられるのが強みです」

 他方、B2Cとは異なり、商品開発のスピードも求められるようになる。

 「今までは自社の開発ペースで良かったですが、B2Bだと顧客のスケジュールに沿って商品を開発しないといけません。これまで以上に新しいことにチャレンジしていかなければ、会社として成長はできないでしょう」と望月社長は気を引き締める。将来的には、B2CとB2Bの売り上げ比率を半々にしたい考えだ。

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