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販売数は34万個超え! 静岡名物「わさび漬け」の老舗メーカーが、ヒット商品「わさビーズ」を開発できた理由変革への危機意識(4/4 ページ)

» 2021年08月20日 05時00分 公開
[伏見学ITmedia]
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わさびを海外に

 もう一つ、田丸屋本店が販路拡大に向けて力を入れるのが、海外展開だ。2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて以降、世界中で「和食(日本食)ブーム」が巻き起こっている。それに伴い、わさびも海外の人たちにとって興味のある食材になってきているという。

 「香辛料といえば、海外では唐辛子が主流ですが、わさびも面白い辛味だと興味を持ってもらっています。生わさびのすりおろしは英国やフランスの高級料理でも使われているようですし、実際に当社の商品に対する海外マーケットの反応も良いです。伸びしろは十分にあります」

 田丸屋本店は現在、チューブタイプのわさびを中心に、中国や米国、マレーシアなど6カ国に輸出する。できれば鮮度の高い商品が望ましいが、海外は常温が基本で、賞味期限が少なくとも1年以上ないと取り扱いが進まないという事情があるそうだ。

チューブタイプのわさび商品

 海外事業については前年比ベースで売り上げは伸びているものの、新型コロナウイルスの影響で、現地に赴いてアピールする機会は奪われている。ヤキモキさせられる時期は続くが、社会情勢が落ち着き、再び人の往来が活発になるなど、来たるべきときに備えて、海外市場のリサーチは進めていくつもりだ。

チューブわさびの製造現場

 老舗企業として守るべきものは守りつつ、果敢に新しい分野に飛び込んでいかなければ、この激しい競争社会では生き残れない。

 「140年以上の歴史の中で、先輩方が培ったブランド力は当社の強みです。それに恥じないようにビジネスをやっていくことが私たちの使命です」

 田丸屋本店の伝統をここで絶やしてはならない。そう肝に銘じて挑戦を続けていく。

著者プロフィール

伏見学(ふしみ まなぶ)

フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。


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