わさビーズ誕生のきっかけとなったのは、ほかでもない望月社長だった。主力商品のわさび漬けは、1990年代初頭をピークに売り上げが低迷していて、それとシンクロするように、購入者の高齢化が進んでいる。
こうした状況を目の当たりにした望月社長は、田丸屋本店を「わさび漬けの会社」から「わさびの総合メーカー」へと転身させるとともに、若い人たちにもわさびの魅力を知ってもらい、もっと食べてもらいたいという思いを抱いていた。そのためには、多くの人々の目を引き、わさびに対するイメージを一新するようなアイデアが必要だった。
そうした経緯で2008年ごろに新商品の企画構想がスタートしたが、開発には苦労を重ねた。
わさびの魅力を伝えるためには、生わさびの本来の味わいを加工品でも維持することが不可欠。しかし、揮発性があり、熱に弱いわさびは、辛味や風味が長持ちしないという課題があった。考え抜いた末、たどり着いたのが「カプセル化」だった。
早速地元の企業にオブラートの技術で包むことを相談したものの難航。一度は頓挫した。それでも諦めがつかず、3年後に別の会社と再び取り組むことに。形状や辛味のバランス、着色料を使わずに鮮やかな緑色を出す方法などに試行錯誤したが、18年10月、何とか商品化にこぎつけた。
「まだまだ改善途中。食感もそうだし、味の偏りもあります。もっと多彩な味が出せるはず。そうすれば、さらに面白い商品になると思いますよ」と望月社長は自信をのぞかせる。
このわさビーズを、同社では“デコレーション調味料”と呼んでいる。
「わさびは香辛料として素材の味を引き立てるだけでなく、調味料的な役割もあります。調味料は隠し味として使われるのが一般的ですが、デコレーションして、あえて見せようと考えました」
例えば、フランス料理で皿にソースをデコレーションするような見せ方はあるが、加工品でデコレーションすることはあまりないという。デコレーション調味料という新しいジャンルを確立したいと望月社長は意気込む。
現在は関連商品として、「ラー油ビーズ」と「ゆず胡椒(こしょう)ビーズ」を販売しており、今後もラインアップを増やしていく考えだ。
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