経産省の担当者とこうした相談をしたのが3月ごろ。制度に応募するには、会社に出向許可を取り、6月までに会社を作り、7月に審査を受けねばならなかった。時間がない中で、松原さんは通常のフローではなく、社長に直接アポを取って説得するという手段を選んだ。
「時間がなかったので、トップダウンが良いなと思いました。役員会じゃなくて、社長のOKさえもらっておけば、役員はきっと『うん』と言わざるを得ないと」
A4で1枚の企画書のみを持って、社長にサウナバスの構想を説明した。新しいことに取り組んでいってほしいという方針の社長は二つ返事でOKをしてくれたという。
社長に先にOKをもらう、という松原さんの作戦はうまく行ったものの、やはり役員会でも説明した方がいいと、プレゼンの機会を得た。サウナバスの詳細や出向起業などを説明した。
リスクについて詰められたり、「サウナバスなんかで事業が成り立つのか」と厳しい意見が寄せられたりしたが、それでも「やってみなければ分からない」という松原さんの強い意思で許可を取り、無事会社を作ることになった。
無事に許可を得た松原さんは、出向起業リバースを立ち上ることに。次に浮上したのは資金問題だ。
「開業資金は自分で出すことになりました。40万円弱のお金を準備する必要があったのですが、当時の状況では厳しかったです」と松原さんは話す。なぜなら、プライベートで結婚式を挙げた月と開業のタイミングが重なってしまったからだ。
「夫婦のお金ですし、結婚を決めたときは起業する予定ではなかったので、大変でした。さらに自分がやっていけるのかという覚悟を持つまでに、悩んだり、しんどいと感じたりすることはありました」
貯金と親から借りたお金で開業し、その後は銀行の融資を受けようと奔走した。しかし、手元にある金額が少ないことや、出向起業という雇用契約がつながった形での起業が浸透していないことから、断られることが多かった。最終的に、神姫バスが出資しているコーポレートベンチャーキャピタルの融資がおり、1000万円を調達できた。経産省の「出向起業等創出支援事業」としての審査も無事に通り、補助金が下りた。
「サウナバスには1000万〜1500万円ほどの金額が掛かっています。当時は支払いと補助金の還付の自転車操業でした」
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