救急隊がコンビニなどで食事を摂ることの是非について、市民の理解も広がっている。
内閣府政府広報室が17年に実施した「救急に関する世論調査」。救急隊が出動の合間に「やむを得ずコンビニや病院で飲食物を購入したり、食事をしたりすることについてどう思うか」との質問に対し、「仕方がないと思う」が63.0%、「どちらかというと仕方がないと思う」が18.3%となり、8割超が理解を示していた。
一方で、「どちらかというとやめた方がいいと思う」(8.3%)、「やめた方がいいと思う」(7.7%)という回答もあった。
今回のSNSの反響について、横浜市消防局で救急隊として勤務した経歴を持ち、現在は国士舘大学体育学部スポーツ医科学科で救急救命士の養成に携わる張替喜世一(はりかえ・きよかず)教授は、「市民の理解が広がっており、うれしい」と話す。
張替教授は06年頃まで救急隊として勤務していた。当時、病院近くの店舗で飲み物を購入し、市民に通報を受けた経験があるという。
「通報の趣旨を聞くと『何かあった時にすぐに出動できるのか』という内容だった。当時はまだまだ救急隊がコンビニなどを利用するといったコンセンサスが得られていなかった」
救急隊の食事は、栄養バランスなどの観点からも、自炊が中心になるという。当時は、救急隊が店舗に買い物に行くのを控え、「スーパーから配達してもらったり、担当者を雇って買い物に行ってもらったりする署もあった」と張替教授は話す。
一方で、海外に目を向けると、救急隊を取り巻く環境は日本と大きく異なる。張替教授によると、米国では日本と異なり、救急隊は基本的に消防署には戻らず、車両を走らせながら外で待機する。このため、食事も外食が多くなるという。
「ファストフード店などに救急隊が立ち寄ると、混んでいても市民が『お先にどうぞ』と列を譲る。米国では、自分たちを守ってくれる人を尊敬する文化が強く、一方の日本では、救急隊は呼べば来るのが当たり前、という文化があるようだ」と張替教授は指摘する。
張替教授は、SNSでの反響に「行政の努力もあり市民の意識が変化してきている」と指摘し、「こうした動きは、現場の救急隊にとっても非常にありがたい。今回の反響が救急隊の働く環境や食事環境を考える大きなきっかけになるのではないか」と話す。
ともすれば、今回の動きは、救急隊に限った話ではないのかもしれない。
警察官や自衛隊など、制服を着た公職に就く人にも当てはまる。社会の秩序維持を担うすべての人々の労務環境について、改めて考えるきっかけとなるのかもしれない。
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