救急隊に食事の時間を――。さいたま市消防局が7月26日に発表した呼び掛けが、SNSで反響を呼んでいる。夏場に出動の機会が増え、救急隊が食事を摂る時間が減っているとして、コンビニエンスストアなどでの飲食物の購入に理解を求める内容だ。かつては、救急隊が店舗で買い物をしているだけで通報されたケースもあるという。SNSには理解を示す声が広がっており、救急隊の経験がある専門家は「時代を経て市民の意識にも変化が見られ、現場の救急隊にとってもありがたい」と話す。
「救急出場が続くと、救急隊が消防署に帰れない時があります。そんな時は、出場できる体制を取りつつ、救急隊がコンビニなどで飲食物を購入し食事をする事がありますので、ご理解をお願いいたします」
さいたま市消防局のTwitterの投稿には、16万を超える「いいね」が押され、一般ユーザーからは「コンビニもファミレスも遠慮なく使ってください」「猛暑の中お疲れ様です」などと理解を示す声が寄せられている。
さいたま市消防局の担当者は今回の広報について、「クレームがあったわけではない」としつつ、「(救急隊が店舗を利用すると)市民からは色々な見方をされ、救急隊としても気にする部分がある。隊員が食事を摂る環境を整えるために周知した」と説明した。
さいたま市消防局では、以前からも病院などに併設された売店で、救急隊が飲食物を購入することはあったという。夏場の熱中症患者の増加や、コロナ禍で出動要請が増える中、救急隊が食事を摂る時間が減っていたといい、市民に理解してもらうために今回初めて、広報を行ったという。
反響については「ここまで大きいとは想定しておらず、理解の声が多くて、われわれとしてもうれしい」と担当者は話した。
総務省が2017年に発表した全国の消防本部へのアンケート結果によると、「救急隊が正規の時間帯に食事時間を確保できているか」との問いに、約6割の消防本部が昼食、夕食ともに、正規の休憩時間帯に摂ることができていないと回答した。現在はコロナ禍などで出動要請が増えており、状況はさらに悪化している可能性がある。
こうした状況を受け、さいたま市以外の消防局も、これまでに救急隊の飲食への理解を市民に呼び掛ける広報を進めてきた。
船橋市消防局は16年に「病院の売店や自販機で飲食物を購入することがあります」「病院の職員が使用していない時間帯の職員用食堂などの借用をお願いいたします」といった依頼を医療機関に出し、市民への周知と合わせて理解を求めた。
東京消防庁も05年以降、連続出動などで食事時間がなくなってしまった救急隊が、消防署に戻る途中にコンビニやファストフード店に立ち寄ることを許可している。
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