ほかにも、上司に相談しても徒労に終わる現状や、パワハラに対する理解が薄い社の実態を物語る従業員の声が続く。
ほとんどの上司が相談に対して言う最初の一言が「本当か?」。上司に相談に行くのは自身で結構悩んだ後なので、この言葉を聞くたびに相談する意欲を無くす。この精神状態が行くところまで行ってしまうと「上司に黙って進めてしまえ」と考えるのだろうと思う。
(日野として変えるべきことは)パワハラの実績があるものを役職に就かせないこと。役員・上級管理者はパワハラで告発されても特に処分が甘いと見られている。降格もありだと思う。パワハラ気質は一時的な訓戒では改善しない。実例はいままで幾度と見てきたし、実際にされてきた。働くものを委縮させてしまっては、いつまでたっても不正はなくならない。
こうした日野のパワハラ体質を象徴する文言が、報告書には記載されている。従業員の回答から散見されたという「お立ち台」の文言だ。
日野では、問題を起こした担当者が、他の部署も数多く出席する会議の場で、衆目の中、問題の原因や対応策について説明を求められる状況を指す言葉だという。
我々は『お立ち台』と呼んでいたが、問題が発覚して日程内に間に合わなければ、開発状況を管理する部署の前で状況を説明させられ担当者レベルで責任を取らされることになっていた。
経団連が21年に実施した職場のハラスメントに関するアンケート調査。400社が回答(回答率26.9%)した結果では、5年前と比べ、パワハラに関する相談が「増えた」と答えた企業は44.0%と半数近くに上った。
20年6月に、大企業に対しパワハラ防止措置を義務づける「改正労働施策総合推進法」が施行され、社会の関心の高まりや、各社が相談窓口の周知を強化したことなどが、増加の要因としている。
一方で、ハラスメント防止に向けた課題では、「コミュニケーション不足」(63.8%)、次いで「世代間ギャップ、価値観の違い」(55.8%)、「ハラスメントへの理解不足(管理職)」(45.3%)が上位に挙がった。日野の従業員アンケートとも符合する点がいくつもある。
調査委は報告書の中で、「日野は、パワーハラスメントをめぐる世間の『物差し』の変化を十分に感じ取れず、うまく対処できないまま、時代に取り残されてしまったのではないか」と指摘する。
従業員の証言や調査委の指摘から、自社でも心当たりがあると感じた読者は多いのではないか。日野のケースを他人事とせず、自社を顧みる契機とする必要がある。
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