ここまで、法人税の申告・納付で税額を間違えた場合の手続きについて解説してきましたが、実は多くの場合(特に中小企業であれば)、よほど大きな金額の誤りでなければ、当期において、「前期損益修正益」または「前期損益修正損」等の科目で修正して差し支えないでしょう。
例えば、期末に生じた40万円の売上の計上漏れが原因で、前期の決算書の売掛金100万円が実際には140万円だったとき、当期において、図表4の例1のように仕訳を入れます。
本来は、修正申告で前期の益金を40万円増やし、当期は修正を加えないのが正しいのですが、前期の申告はそのままにし、前期漏れていた分を当期の収益とします。
例えば、期末に生じた40万円の外注費の計上漏れが原因で、前期の決算書の買掛金60万円が実際には100万円だったときは、図表4の例2の仕訳を入れます。
(1)とは逆に、本来は、更正の請求で前期の損金を40万円増やし、当期は修正を加えないのが正しいのですが、前期の申告はそのままにし、前期漏れていた分を当期の損金としています。
前期の間違いを見つけるたびに修正申告や更正の請求をするのは現実的ではありません。手間もかかりますし、税理士報酬も追加でかかってしまいます。
ただし、その判断は1人でするのではなく、上司へ報告して行いましょう。
なお、更正の請求により還付された法人税などは、雑収入として計上します。図表4の例3は、還付金50万円を受け取ったときの仕訳です。
過年度の法人税などの修正額は、「過年度法人税等」といった科目で、損益計算書上、当期の「法人税等」の次に表示します。ただし、重要性が乏しい場合(金額がそこまで大きくない場合)には、当期の「法人税等」に含めることもできるとされています。
図表4の例4は、修正申告により、本税と延滞税および延滞金あわせて50万円を追加して納付したときの仕訳です。
「本税」「延滞税(延滞金)」は区別して仕訳するとよいでしょう。納付をした期の申告書では、これらを区分して記載する必要があるので、仕訳のときに区別しておくと楽です。
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間違いは誰にでもあります。決算の際には、売上や仕入れの計上時期が適正か、期末商品の数量や評価に誤りがないか、役員報酬のうち損金算入が認められないものが含まれていないか……など、再確認するようにしましょう。
脇田弥輝税理士事務所/税理士
大学卒業後、税理士事務所、税理士法人勤務を経て、2016年脇田弥輝税理士事務所を開業。同年より東亜大学院法学専攻非常勤講師を務める。
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