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法人税申告・納付のミス発覚! 税額の誤記に気付いたら、どうすればいい?大ごとになる前に(1/3 ページ)

» 2022年08月10日 13時00分 公開
[企業実務]

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 本記事は、2022年6月号に掲載された記事「法人税の申告・納付で税額を間違えた場合の手続きを確認しておこう」を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集し、転載したものです。


 法人税の申告・納付後に間違いに気付いたとき、いつまでにどのような手続きをすればよいのか、経理担当者が知っておきたいことを確認しましょう。

「更正の請求」と「修正申告」

 はじめに言っておきたいのは、間違いは誰にでもある、ということです。間違いに気付いたということは、成長の証し。とはいえ、間違いに気付いて、サーっと血の気が引くこともあるかもしれませんね。

 でも、それを隠そうとしたり自分1人でなんとかしようとすると、もっと大ごとになるかもしれませんし、逆に、意外に自分が気にするほど大したことではない可能性もあります。

 すでに提出して、提出期限も過ぎた期の決算書を「直接」直すことはできません。確定した決算に基づいて作成された申告書を提出したからです。確定した決算とは、その事業年度の損益計算書等の計算書類について株主総会の承認などを得たものを言います。

 そこで、前期の決算書(つまりは前期の帳簿)を直接直すのではなく、当期に修正の手続きをすることになります。税額を多く申告していたときは「更正の請求」、税額を少なく申告していたときは「修正申告」を行います。

  • 更正の請求…間違いを修正して納付し過ぎた分を返してもらう
  • 修正申告…間違いを修正して不足していた分を納める

 以下、ケース別に見ていきましょう。

【ケース1】多く申告・納付したとき、あるいは還付金が少なかったとき

 例えば、

  • 前期の売り上げではなかったのに前期の売り上げに計上していた
  • 前期の費用なのに損金に算入しなかった
  • 欠損金の繰越控除を行わなかった
  • 税率の適用を間違えた

などの理由により、本来納めるべき金額より多く納付した、もしくは還付金が少なかったことに気付いたとしましょう。この場合、「更正の請求」をして、納め過ぎた税金を還付してもらう、もしくは足りない分の還付金をさらに還付してもらうことになります。

 更正の請求をするには、「更正の請求書」を提出します(図表1)。左側にすでに提出した(修正前の間違った)金額、右側に正しい金額を記入します。「納付すべき法人税額(地方法人税額)」もしくは「還付金額」の左側(修正前の金額)と右側(正しい金額)の差額が還付されることになります。

photo 図表1

 また、更正の請求をすることになった理由と、それを証明する書類を添付します。還付口座も記載しましょう。

 更正の請求ができる期間は、法定申告期限から5年以内です。

 更正の請求書を提出後、税務署がその内容を確認し、不足資料などがあれば連絡が来ますので、適宜対応しましょう。そして、その請求内容が正当と認められると、通知が来て、納め過ぎていた税金が還付されます。

注意するポイント

 更正の請求は全て認められるのではなく、「損金経理によって初めて損金算入できるもの」については、最初から費用または損失として処理していないと、後から更正の請求をしても受け付けてもらえません。

 具体的には、次のような項目があります。

  • 減価償却資産の償却費、繰延資産の償却費を償却限度額まで償却しなかった
  • 貸倒引当金などの引当金の繰入れ、準備金の積立てを限度額まで行わなかった
  • 時価が低下した資産の評価損を計上しなかった
  • 少額の減価償却資産の取得価額を費用とせず資産計上していた

 これらは、「当初申告要件」といって、当初提出した申告書で損金経理をしていないと損金算入が認められないのです。

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