ローカル鉄道は高コストなのに、なぜ「運賃」はバスより安いのか:杉山淳一の週刊鉄道経済(3/6 ページ)
鉄道と並行するバスの運賃は、バス会社から見れば破格の低運賃だ。鉄道運賃が不当な競争ではないかと言いたくなるほど安い。だから競争力を保つため、鉄道運賃と同水準になるように補助金を活用している。バス会社にとっても、補助金を出す自治体にとっても、鉄道運賃の安さは恨めしい。
なぜ補助金もないのに、運賃設定を安くできたか。それは、JRには「内部補助」という、補助金に代わる資金源があるからだ。利用者の公平性を保つため、全国一律料金体系としつつも、大都市の通勤路線や新幹線で利益を出し、その一部でローカル線を補てんしている。
しかし、それぞれの鉄道路線をひとつの事業部として捉えれば、路線ごとに収益に応じたサービスアップが行なわれるべきだ。通勤路線の利益は、通勤路線の利用者に還元されるべき。運行本数や車両数の増加、可動式ホーム柵、エレベーター、エスカレーターの設置など、サービス向上に投資したい。
鉄道会社の運賃はどうなる
ただ、売り上げの一部が赤字ローカル線に流れてしまうと費用が足りない。赤字ローカル線がなければ、いや、なくさないまでも収益が上がれば、黒字路線の追加投資にまわせる。その意味で、赤字ローカル線問題は都市の人々にも関係がある。ローカル線地域だけではなく、国民全体で考えていきたい問題である。
長らく赤字ローカル線の廃止問題が続いている。赤字の理由はなにか。もちろん乗客数が減ったこともある。しかし、そもそもコストに見合った運賃になっていない。鉄道の運賃は安すぎる。
その理由は本連載の過去回でも紹介したとおり、鉄道が地域独占企業として規制されてきたからだ。(関連記事)
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。
- ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。
- 2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。
- 不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。
- 東京メトロ「有楽町線」「南北線」の延伸で、どうなる?
東京メトロ有楽町線と南北線の延伸が決定した。コロナ禍で事業環境が大きく変化する中、東京メトロが計画する今後の戦略とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.