次に「総括原価方式」も見直すべきと提案する。ヤードスティック方式によるコスト比較は、適正な競争を促す枠組みとしてつくられた。しかし、実際にコストを比較する対象は「JR同士」「大手私鉄同士」「地下鉄同士」だ。A駅からB駅まで、JR、大手私鉄、地下鉄の路線が並行していた場合、同じ区間の路線同士のコスト比較は行なわれない。
また、現在の総括原価方式は、鉄道施設の強靱化、セキュリティ対策、カーボンニュートラルへの対応など、新たなコストが反映されない。運賃値上げでこれらのコストを反映されないなら、そこにコストをかけないという選択になるだろう。それはよろしくない。
最後に「地方部における地域モビリティの維持・確保に向けた制度見直し」が提案された。現在は国が鉄道事業者に対して運賃を認可する仕組みになっている。それを、地域の関係者の合意を前提として、認可運賃と異なる運賃設定を可能になる枠組みを検討していく。ここが新聞などで最も大きく報じられたところだ。「いままでは国の認可が必要だった鉄道運賃を、地方自治体が認可できる枠組み」という。
つまり「地方自治体の権限でローカル線の運賃値上げを認める」という解釈だ。それは少し間違っている。鉄道単体の値上げを認めるか否かではなく、鉄道とバスが並行する区間で共通運賃としたり、MaaSによって他の交通手段と組み合わせたり。そのために、鉄道・バス・タクシーなど交通モードによって運賃認可の手順がバラバラという状態は困る。自治体がまとめて交通をデザインできるようにしよう、という主旨だ。
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