ローカル鉄道は高コストなのに、なぜ「運賃」はバスより安いのか:杉山淳一の週刊鉄道経済(4/6 ページ)
現在の鉄道運賃制度は1999(平成11)年の鉄道事業法改正から20年以上も見直されていない。
そしてわずかな例外を除いて、ほとんどの鉄道事業者は消費税の転嫁以外、運賃値上げをしてこなかった。おそらく、消費者物価指数と照らし合わせて値上げを遠慮したのではないか。もっとも消費者物価指数もくせ者で、品目入れ替えでパソコンや携帯電話などを組み入れて、それらが大幅に値下がりしたために総じて変化がないように見える。
ともかく、鉄道事業者は値上げなしでなんとかやってきた。JRの場合は割引きっぷを廃止し、届出で変更できるグリーン料金や特急料金を上げた。ところがコロナ禍の乗客激減を経験し、これ以上の経営努力では間に合わないほど経営が悪化した。そこでついに鉄道各社から運賃値上げの検討が始まった。その上で、上限運賃制度の足かせを外してほしいという要望が強い。
鉄道会社は運賃値上げをなかなかできなかった
こうした動きを受けて、国土交通省はついに、現行の運賃・料金制度の改革に着手するため、交通政策審議会において有識者会議「鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会」を発足させた。同委員会は2022年4月から7月まで月に1度開催された。鉄道業界、消費者団体、経済団体からの意見聴取と議論を重ねて、7月26日に事実上の結論「中間とりまとめ」を発表した。
「中間とりまとめ」は「上限運賃制度は地域輸送独占の手段として機能していない」と指摘する。交通市場として捉えれば、マイカー、路線バス、乗り合いタクシー、シェアカー、シェアサイクルなどさまざまな交通手段があり、鉄道は独占ではなく競合に取り込まれている。運賃変更に必要な期間も長すぎて、時代の変化に対応できない。
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