クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

部品供給の構造問題と国内回帰という解決策 自動車各社決算の読み解き方池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2022年08月15日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 自動車メーカー各社の第1四半期決算が出揃った。という書き出しに反しているかもしれないが、実は第1四半期決算はあまり重要ではない。

 理由は簡単。3月末で締まり、5月に発表された本決算の見通しでは、滑り出しの4月の要素はそれなりに反映されているから、そこからたった2カ月で大きく予想を覆すようなことにはまずならない。むしろそこで何かあるなら大事件と言っていい。

 実際各社の決算を見ても、通期予測に関しては特に波乱はない。三菱自動車だけわずかに上方修正があったが、それ以外は全社期首予想を据え置きである。影響を与えたのは「部品供給不足」「原材料価格高騰」「円安」の3つで、それが分かれば概ね予想は付いてしまう。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

「部品供給不足」「原材料価格高騰」「円安」

 部品不足に関しては、サプライチェーンをどうコントロールできたかがほぼ全て。部品不足で製品の生産は不足しているにもかかわらず、需要は概ね好調なので、作れれば売れる。実際スバルはそのように発言している。なので、生産台数の推移を見れば、どのメーカーが調達力が高いのかが判断できる。

 原材料価格の高騰に関しては、各社ともほぼ打つ手がない。トヨタに至っては1兆7000億円もの原材料価格高騰に苦しめられている。ただし、先に触れたように、旺盛な需要に対してクルマの供給不足が続いているので、値引きが抑えられるし、クルマがなければ広告宣伝費も掛けようがないので、トータルで見れば原材料費高騰の埋め合わせはある程度できる。

資材高騰が1.7兆円の影響となったトヨタ(決算資料より)

 そして円安である。今回の円安では、海外での売り上げを円に換算すると十パーセント台後半レベルで利益が出る。この金額は巨額に上るので、先の値引き抑制や広告費の削減と合わせ、原材料費の価格高騰や部品不足に起因する生産台数の落ち込みをほぼ埋め合わせできている。メーカーごとの差があるとすれば、やはり国内生産が多いメーカーほど輸出での利益が増えている。裏返せば円高局面でリスク回避のために、現地生産を増やしたメーカーは儲(もう)け損なったところがある。

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