さて、そうした情勢の中で、そろそろ構造的に手を付けなくてはいけないのが、部品供給問題である。コロナ禍の発生以来、問題が表面化し、徐々に拡大していったサプライチェーンの毀損(きそん)は、そろそろ一時的問題とは言い切れない状態になってきた。
自動車メーカーが自動車を作れないのだから大問題に決まっている。過去にも何度も書いてきたが、それはグローバルサプライチェーンの欠点が露見して来たことを意味する。
耳にタコができている人もいるかもしれないが、この源流は、ベルリンの壁崩壊からスタートする旧東欧圏の工業化である。主にドイツの自動車メーカーが、人件費と地価が安く、教育水準が高い東欧に労働集約的部品の生産を任せ始めた。クルマは3万点ともいわれる多くの部品の集合体であり、その部品には高度で高コストな機材と技術が必要なものもあれば、何より安い労働力が必要とされる部品もある。それらを自由貿易協定(FTA)エリア内でうまく組み合わせて、トータルコストを抑えながら、高度な製品作りを行っていく方法だ。
日本の自動車メーカーはこれに範を取り、ASEAN(東南アジア諸国連合)で同様の手法を取り始めた(記事参照)。工業水準と人件費の異なる国が一つの経済圏として固まっているASEANは、この取り組みにとってかけがえのないエリアだった。しかし、異なる経済力の国々があれば、コロナのような問題が発生した時、防疫力に大きな差が出る。その差によってロックダウンなどが発生する。国際分業によるローコスト化は、その構造がボトルネックとなって顕在化してしまった。
問題発生直後は、「そう簡単に置き換えることが不可能」と考えていたメーカー各社も、そろそろ一定の頻度を覚悟すべきリスクと、その捉え方を変え始めた。
では、どうするのか? そう簡単に適度な工業力差や人件費差があるFTAエリアはない。かといってこのまままた生産ストップを許容していくわけにもいかない。
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