クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

部品供給の構造問題と国内回帰という解決策 自動車各社決算の読み解き方池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2022年08月15日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

中国と米国 エリアごとの見通し

 エリア別の話をすれば、中国に強いメーカーには逆風だ。言うまでもなく上海のロックダウンの影響で、販売が極度の不振に陥ったからだ。ただし、4〜5月でその影響は収まっており、すでに以前の水準に戻っているメーカーがほとんどだ。そうした状況を踏まえて、各社は年間販売台数を期首計画のまま、営業利益も据え置いている。まあ全体としてみれば、諸々の変化を差し引けばプラマイゼロと考えていい。

上海ロックダウンの影響は限定的だ(マツダ決算資料より)

 第2四半期以降の不安要素としては、かなり濃厚になりつつある中国と米国の景気後退気配である。すでにそれを織り込んで(台湾問題の影響も含む)円安が底を打った可能性があることも大きい。長らく続いた荒れ相場に強い円に戻る可能性が高まりつつある。

 そのあたりは各社の長期計画にも影響を与えるので、注意深く見守って行く必要がある。常識的な見通しとしては、中国の景気後退は日本のバブル崩壊と構造が極めて似ている。過剰投資および資産価値縮小の調整が終わるまで先の展望が見えない。簿価変動の大きさからいって、一度崩れたら5年やそこらで回復するとは思えない。少なくとも10年以上は続く長い不景気のトンネルになりそうである。

 一方で米国はどうかといえば、短期的に大きく崩れる可能性はあるが、構造的問題をはらんでいるわけではなく、むしろ常識的な景気循環のサイクルだと見られる。中国発の大不況でよっぽど対応を誤らない限り、2年程度で戻る可能性が高い。

 という仮定をおいての話だが、推測通りに事が進むと、中国投資を進めてきたメーカーは厳しいことになるかもしれない。具体的にいえばホンダと日産である。逆に中国にも米国にも軸足のないスズキは、どちらの影響もほとんど受けない。ただし、日本のメーカーとしては珍しく欧州マーケットに強いので、どうしてもウクライナ情勢や、欧州のエネルギー政策の影響は強めに受ける。それでも真の軸足はインドであり、インドを足がかりに攻めに転じているアフリカマーケットで新たな成功を収めつつあるので、インドとアフリカの動向いかんによっては、欧州の影響は十分キャンセルできてしまうだろう。

アフリカの伸びが大きいスズキ(決算資料より)

 米国経済の影響を強く受ける会社は多い。トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバルは影響甚大である。ただ先に触れたように、米国は周期的に不況が来るので、長期的には各社織り込み済みだし、リーマンショックを筆頭にその対応を経験済み。それほどの心配はしていない。

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