その謝罪、本当に必要? 地震で遅延の新幹線、繰り返し「おわび」アナウンス世の中にあふれる「おわび」(2/2 ページ)

» 2022年08月16日 09時40分 公開
[ITmedia]
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 旅客輸送の安全性は、今年4月23日に北海道・知床半島沖で発生した観光船事故で大きくクローズアップされた。強風注意報や波浪注意報が出される中、同業他社が「出航はやめたほうがいい」と助言したにもかかわらず営業が強行された結果、14人が死亡、12人が行方不明となる大惨事を招いた。

 あのとき飛ばなかった飛行機、走らなかった列車、動かなかった遊園地のアトラクション、すべては安全のためだったんだ――。この事故をきっかけに、SNS上では安全管理に徹する旅客事業者らへの感謝を示すツイートが多数寄せられた。安全性を最優先した日本航空第2代社長の松尾静磨氏が残した「臆病者と呼ばれる勇気を持て」という名言も紹介され、安全配慮のためであれば遅延・運休は当たり前――という考えがあらためて共有された。

街中にあふれる謝罪

 周りを見渡すと、世の中はさまざまな「おわび」にあふれている。新幹線に限らず、飛行機、バスなどの公共交通機関では遅延・運休などを理由とするおわびを頻繁に耳にする。目につくところでは、工事現場などに掲げられた看板に、「ご迷惑をおかけしております」との文言とともに、頭を下げる作業員のイラストが描かれている。そして、そんな「おわび」の背後では、現場の従事者たちが旅客や通行人の安全を守るために身を挺して働いている。

街中にはさまざまな「おわび」が見られる(画像はイメージ、写真AC)

 海外に比べ、「日本人は頻繁に謝る」といわれるように、おわびはその場を無難に収める一種の「コミュニケーション」と捉えられる側面もあるかもしれない。おわびに深い意味はなく、とりあえず付け加えておけば収まりがよくなる場面が多いのかもしれない。

 一方で、近年は顧客が不当な要求を突きつける「悪質クレーマー」などの問題が取り沙汰されているように、不必要なおわびが、一部のクレーマーが不当な要求を突きつける口実として悪用される恐れも否定できない。

 果たして、その「おわび」は必要なのか――。一考の余地があるのではないだろうか。

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