鉛酸バッテリーはバッテリー液が蒸発して補水の必要がある。解決策として、外部との空気口を複雑化することで水分を還元する構造とすることでロングライフで補水不要としたMFバッテリーは、今や大部分のクルマやバイクに使われるようになった。しかしインジケーターで状態を確認するなど点検は必要だし、補充電してやることで寿命を延ばすことができる。
むしろ補水できる従来の鉛酸バッテリーの方が、メンテナンスできるユーザーにとっては費用負担も少なく、長寿命化を図れるのだが、そんなユーザーは極めて少数派であろう。
EVがようやく市民権を得ようとしている現在でも、鉛酸バッテリーはクルマにとって無くてはならないモノとして、まだ当分は電装用バッテリーの主役として使われ続けるだろう。リサイクルによって大半の鉛はまた有効に利用され続けることから、鉛酸バッテリーによる環境問題は、少なくとも先進国では起こり得ない。
リチウムイオンバッテリーの電解液が水溶性になったり、全固体電池が電装用バッテリーとして利用されるまでは、事態は変わらないだろう。
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
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