都の協力金は、中小の飲食店事業者が当初の支給対象だった。だが、都内でチェーン展開する大企業の店舗が対象外だったことで、サイゼリヤなどが反発。業界団体の「日本フードサービス協会」も大手企業を対象とするよう要請するなど、業界からの反発も大きくなっていた。
これを受け、都は21年1月、大企業向けの協力金を新設。サイゼリヤは21年8月期の連結決算で、協力金65億円を計上し、通期純利益が当初見込みの3倍になるとして上方修正するなど、従業員の雇用維持に一定の効果は出ている。
ただ、当初は事業規模に関係なく、1日の支給額が一律6万円だったため、都内でチェーン展開する大企業と、中小事業者間で格差が生じる課題が生じた。コロナ禍前の売り上げが1日6万円にも満たない小規模経営の店舗の場合でも、制度上は月額最大180万円の協力金を得られるため、業界内を中心に批判の声が噴出していた。
その後、政府の方針変更によって、都も支給額を売上高などの事業者の規模に応じた支給制度に変更。事業者間の不公平感解消につなげたが、その一方で申請件数も増加。5900万円の不正受給のケースのように、支給の迅速性を優先させた結果、現場視察など事業者の実態把握がままならないまま、公金が投入され、支給後に不正受給が発覚するようなケースが相次いでいる。
例えば都内では、不正受給でベトナム人社長が逮捕されたケース(裁判で無罪判決)や、不正受給による公表には至っていないものの、週刊文春の報道(2021年6月24日)で、緊急事態宣言下で自身が経営する飲食店で飲み会を開催しながら、都の協力金も得ていたとしてチャンネル登録者400万人以上の大物YouTuberが自主返還するといったケースが発生している。
コロナ禍では協力金の在り方を巡って課題が浮き彫りになった。しかし、当然のことながら、協力金の虚偽申請や不正受給は詐欺罪という列記とした犯罪だ。逮捕され、有罪となった場合は10年以下の懲役刑となる。
各自治体や厚生労働省は不正受給の抑止に向け、通報窓口の設置など取り締まりを強化している。全国で新型コロナの陽性者数が再び増加する中、事業者には適切な制度活用が求められそうだ。
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