「近畿のオマケ」和歌山行きの飛行機に、なぜ客が増えているのか「旅の満足度」が1位(2/4 ページ)

» 2022年08月24日 06時30分 公開
[濱川太一ITmedia]

 人口増が見込めない中、県は「定住人口」ではなく、地域に継続的に関わる人を指す「関係人口」を増やすことに着目。2001年度からIT企業誘致に力を入れ、15年にセールスフォース、16年にNECが白浜町に相次いでサテライトオフィスを開設した。22年3月末現在、都市部のIT企業を中心に、白浜町や和歌山市などに合計35社がサテライトオフィスを開設している。

リゾート地の白浜町は「ワーケーションの聖地」との呼び名が高い(出典:ゲッティイメージズ)

 県はIT企業の誘致に加え、Wi-Fiの整備も推進。人口当たりの整備数は全国2位(2018年調査)という充実ぶりだ。ワーケーションに適した土台を着々と築き上げてきた結果、17〜21年度の5年間で、159社1373人が県内でワーケーションを体験したという。

顔認証で「手ぶら決済」 日本初の民間ロケット発射も

 搭乗客が増えた要因はほかにもある。IT企業の誘致により、地域には新たな変革がもたらされた。16年にサテライトオフィスを開設したNECは、南紀白浜エアポートと連携し、19年から顔認証技術を用いた「IoTおもてなしサービス実証」を開始した。

 事前に顔情報やクレジットカード情報を登録することで、現金やカードを使わずに、機器に顔をかざすだけでホテルやテーマパーク、飲食店などで「手ぶら決済」ができるようにした。これまでに顔認証サービスを導入しているのは13施設に上り、複数の施設が共同で導入するのは国内初だ。こうした先端事例に学ぼうと、19年以降、全国から100件以上の視察が訪れているという。

南紀白浜空港に設置している顔認証機器(提供:南紀白浜エアポート)

 このほか、県南部の本州最南端に位置する串本町では現在、宇宙輸送サービス「スペースワン」(東京都港区)による日本初の民間ロケット発射場の整備が進んでおり、最初の打ち上げを年末までに予定している。こうした新プロジェクトの企業関係者らも頻繁に訪れている。

 ビジネス目的の搭乗客が増えていることを踏まえ、県は定期便の機材を大型化した。それまでは95席の「エンブラエル190」だったものを、19年10月以降、165席ある「ボーイング737―800」に変更。現在は東京・羽田間を1日3往復するが、今後、4往復に増便する計画も立てており、実証実験に向けて調整を進めている。

搭乗客が4カ月続けて月別の過去最多を更新している南紀白浜空港(提供:南紀白浜エアポート)

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