「セルフレジ」を支持している人は多いのに、なぜスーパーでなかなか普及しないのかスピン経済の歩き方(2/7 ページ)

» 2022年08月30日 10時18分 公開
[窪田順生ITmedia]

働く人たちをゲンナリさせている

 全国スーパーマーケット協会など3団体が公表している「2021年スーパーマーケット年次統計調査報告書」によれば、全国278企業の中でセルフレジの設置率はなんと23.5%しかない。「アフターコロナだ」「非接触だ」と大騒ぎしていた20年も15.8%に過ぎないのだ。

セルフレジの設置率(出典:2021年スーパーマーケット年次統計調査報告書)

 その理由は企業規模ごとの設置率をみていけばよく分かる。51店舗以上を保有している大手では70.6%という高い設置率となっているが、26〜50店舗の中堅になるとガクンと落ち込んで39.3%。4〜10店舗という地域密着型になると12.8%まで落ち込む。つまり、消費者の間ではすっかり定着したかのように思っていた「セルフレジ」だが、それは実はイオンやイトーヨーカドーのような全国展開する大企業に限った話だったのだ。

なぜ「セルフレジ」はなかなか普及しないのか(提供:ゲッティイメージズ)

 なぜここまで大手と中小で差が出るのか。設備投資ができる資本力の差もあるが、実は大きいのは「現場で働く人をゲンナリさせている」からだ。

 それがよく分かるのが、「セルフレジ導入で人手不足解消のはずが、逆効果に? その事情を担当者に訊いてわかった意外な理由とは」(デイリー新潮 8月28日)という記事だ。東海地方を中心に展開するスーパーチェーン「バロー」のある店舗で、セルフレジコーナーが閉鎖されてしまったのだが、それはなんと「セルフレジ係」が体調不良で休んでしまったからだというのだ。

 ご存じのように、セルフレジというのはまったく無人ではなく、必ず近くに数名のスタッフが待機して、かなり忙しく働いている。機械の操作が分からない人をサポートしたり、読み取りや釣り銭のエラーがでたときの操作だったり、スキャン後にやっぱり買わないという商品のキャンセルをしたり、レジ袋が足りているかをチェックしたり、駐車場のサービス券の発行をしたり、さまざまな仕事があるのだ。

 これが現場で働く人たちをゲンナリさせている。

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