では、高齢化社会の日本で「セルフレジ」を新しい常識として定着させることが難しいというのなら、スーパーはどうやって人手不足に対応していけばいいのか。まずやるべきは「セミセルフレジ」だ。
これは「セルフ精算レジ」とも呼ばれるもので、商品のスキャンは係の人にやってもらった後、精算だけを機械で自分で行うスタイルのレジだ。これならば、現金の受け渡しなどをしないのでレジ係の負担は大幅に減るし、「1人暮らしの高齢者」もレジ係の人と会話をすることもできる。孤独対策と効率化を両立する、日本向きのスタイルと言えなくもない。
スーパーの設置率がそれをよく表している。先ほどの「2021年スーパーマーケット年次統計調査報告書」によれば、セミセルフレジ設置率は72.2%で、51店舗以上の大手は94.1%だが、4〜10店舗の地域密着型でも71.8%、1〜3店舗の地域スーパーでも58.0%となっている。
つまり、地域の「孤独な高齢者」たちがよく利用して、レジ係との何気ない会話を楽しみにしているようなスーパーであっても、セミセルフレジは活用できるということだ。
個人的には、このセミセルフレジを常識として定着させながら、レジ係とゆったりと世間話ができる「おしゃべりレジ」の割合を、それぞれの地域の高齢者率に見合う形で増やしていくべきではないかと考えている。
もちろん、セルフレジでスピーディーに誰とも会話をせずに買い物をしたい人がいてもいい。そういう人たちは次世代セルフレジでも無人決済でも宅配でも使えばいい。
しかし、これからの日本のスーパーには、「モノを買う場所」以外の役割も求められる。高齢者がレジでモタモタしながら店員さんと会話を交わすという、若い人たちがイライラしそうなやりとりにこそ、「価値」があるような場所になっていく。
ちょっと前までテクノロジーの進化によって、いろいろな職業がいらなくなるという話が大流行りだった。しかし、まだ現時点では、人の孤独を癒すことができるのは、人とのつながりしかないという現実もある。
スーパーのレジ係も消滅する職業だと言われている。だが、もしかしたら消滅するのは「レジを打つ人」だけであって、「客とコミュニケーションを取って孤独を癒す人」という職業に関しては、これからも求め続けられていくのかもしれない。
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