都会から移住、朝食屋に行列 『鎌倉殿の13人』で注目の「鎌倉」で何が起きているのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)

» 2022年09月01日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

朝食に注目した理由

 鎌倉の朝食ブームに火を点けたのは08年、七里ヶ浜にオープンした「ビルズ」だ。今やパンケーキの人気店として東急プラザ表参道原宿など、東京、神奈川、大阪、福岡に国内8店を構えるが、日本での1号店はこの店だった。

ビルズ 七里ヶ浜店

 「ビルズ」はオーストラリアのシドニーで、世界一の朝食を提供する店として、スクランブルエッグが評判になっていた。それに目を付けて、カフェ「サイン」などを展開する外食企業のトランジットジェネラルオフィス(東京都渋谷区)が提携し、日本で展開している。近隣にあるカレー専門店「珊瑚礁」、イタリアン「アマルフィ」などと共に、オーシャンビューも売りになっている。

ビルズの世界一と称されるスクランブルエッグ

 七里ヶ浜には21年12月に新商業施設「トライアングル七里ヶ浜」がオープンした。江ノ電の線路と海岸を走る国道134号線に挟まれた、狭小な三角形の土地を有効利用。建物全体を大きな客船に見立て、地下1階〜2階にあるテナント5店の飲食店において、相模湾から江ノ島を見渡せる眺望が売りになっている(現在1店は空き店舗)。

 トライアングル2階に立地する「エスプレッソ ディー ワークス(EDW)」は、喫茶の本場、愛知県一宮市に本社を置く外食企業のDREAM ONが開発したカフェ業態。14年10月、東京・恵比寿に1号店がオープン。この店が行列店となり、11店にまで増えた。

エスプレッソディーワークス 七里ヶ浜店
エスプレッソディーワークスの料理、クロワッサンエッグベネディクト(出所:プレスリリース)

 テラス席からの展望のみならず、ほぼ全席から海が見渡せるのが売りで、海が好きなオーナーがDREAM ONのFC(フランチャイズ)に加盟して出店した。インスタグラムを見た若者の来店が多い。サーフィンなどのマリンスポーツ愛好者や鎌倉観光で来た人が中心だ。

 営業は午前8時から午後8時まで。七里ヶ浜は街灯が少なく日没後は暗くなってしまうので、朝・昼が中心の営業だ。

エスプレッソディーワークス 七里ヶ浜店、海に向いたテラス(提供:ドリームオン)

 リッチな朝食、EDWブレックファースト(1800円)は、トリュフオムレツに「天使のクロワッサン」というクロワッサン、ベーコン、ソーセージ、サラダが付いたセット。350円を加算するとドリンクセットになる。

 非日常を味わいに来る人がほとんどなので、特に夏場は単価を上げているという。

 DREAM ONの赤塚元気社長は、居酒屋で繁盛店を築いてきたが、海外視察により高齢化が先に進んだ欧米では夜の酒場が廃れて、朝から開いているカフェが盛況と気づいた。そこで、日本でもやがて朝食需要が高いカフェ業態が主力になると、研究を重ねてきたという。

 鎌倉はまさに、同社が狙ってきたカフェの立地にぴったりではないだろうか。

 この他にも、例えば小町通りから入った路地にある玉子焼専門店「おざわ」は、午前11時に開店。遅めの朝食が取れる店として人気だ。ダシが効いた玉子焼を目当てに、夏の炎天下でも連日1〜2時間待ちの行列ができる。

 看板メニューの「玉子焼き御膳」は玉子焼3切れに付け合わせの野沢菜漬、塩昆布と明太子が少々乗ったご飯とみそ汁が付いて1400円。強気な価格設定でも評判の味を求めて連日、観光客が押し寄せている。

おざわの玉子焼御膳(1400円)

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