イオンシネマが今回の注意喚起に際して重視したのが「鑑賞価値の向上」という点だ。
新型コロナウイルスの流行で大きな打撃を受けた映画館・シネコン市場。帝国データバンクの調べによると、イオンシネマやTOHOシネマズなどを中心とした21年度の国内映画館市場(事業者売上高ベース)は、過去10年で最少だった20年度(1783億円)と比べ、約20%増の2100億円となる見通しで、回復基調にある。ただし、過去10年で初めて3000億円を超えた19年度の6割ほどの水準に依然とどまっている。
さらに、コロナ禍の巣ごもり需要を背景に、「Netflix」や「Amazonプライムビデオ」といった定額制の動画配信サービスが伸長。21年度の動画配信サービスへの支出額は6年前の4倍超に達している。一方で、映画館での支払額は低迷しており、コロナ禍に襲われた20年度は以前の約3割の水準へと急減、21年度も6割前後とコロナ前の水準には届いていない。
こうした中、大手シネコンは近年、入場料が高額な「体験型シアター」の導入に注力する。テーマパークのアトラクションに乗るような体験を提供する「4DX」や、従来にない大型スクリーンによる高画質・高音質・大迫力の映像体験を提供する「IMAX」などを導入。
この結果、映画館での支払額は低迷する一方、映画チケット代は反対に上昇を続けており、21年度の平均額は1410円と過去最高を記録。「来場機会の減少を付加価値による客単価の上昇で補う構造へと変化している」(帝国データバンク)という。
映画館ならではの「鑑賞価値」向上を目指す取り組みも、マナー違反が多発すれば、映画館へ向かう足はますます遠のき、市場回復の妨げにもなりかねない。映画館のように不特定多数の客が集まる施設で、マナー順守の呼び掛けを多くの人に届けるためには、従来にない新たな情報発信が求められているのかもしれない。
イオンエンターテイメントの中村さんは「今後も最高の環境で映画を楽しんでいただけるよう努力し、さまざまな方法で情報を発信していきます」と話している。
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