よりサステナブルな建物に変えていくことは、間違いなくコストがかかります。しかし、気候変動に対応した改修は資産価値を高めることにつながります。改修は今後の規制強化に対してポートフォリオを守る役割を果たすほかインフラ環境を改善し、二酸化炭素の排出量目標を達成することで移行リスクや洪水、熱波などの物理的リスクを軽減できます。
また、改修後の建物はブラウン資産と比べてはるかに強い賃貸能力を備えています。パンデミックが不動産市場を揺るがした過去2年を振り返ってみても、グリーン・ビルディングへの需要は堅調です。こうした建物はまだ供給不足(17年のBPIEのレポートによるとEUの建物のうちEPCのAランクを取得したのは全体の3%未満)で、向こう10年もその先も需要は続くでしょう。変革とそれが生み出す価値の重要性を理解するプレーヤーが早い段階で優位性を発揮することを期待しています。
業界全体の変化を受け入れることは、投資家が投資リターンとネット・ゼロへの貢献を目的に、通常のリスク・リターンモデルを超えて脱炭素化の目標をポートフォリオに組み込もうと考え始めることを意味します。Thinking Ahead Instituteのレポート(注5)によると、人々は高いリターンと投資に値する世界の両方を求めています。ポートフォリオ・マネージャーは2つの目標を同時に達成する必要があり、とても難しい作業が伴うでしょう。しかし、ネット・ゼロの目標にプラスの貢献をするのであれば、それこそが投資の未来の姿だと言えます。
欧州の不動産ポートフォリオを変革することは、簡単ではありません。その規模も金融情勢に与える潜在的な影響も甚大な上、この大きなうねりを前に拠って立つフレームワークも存在しません。しかし、建物から二酸化炭素が排出され続けることによる潜在的な気候変動へのインパクトを踏まえると、投資家や業界、地域社会にとっての最大のリスクは、何もしないことなのです。
(この記事は2022年8月30日にフィデリティ・インターナショナルのサイトに掲載された英文記事を翻訳・編集したものです)
世界で250万以上のお客様に投資に関するソリューション・サービス、退職関連の専門的知見を提供しています。創立以来50年超、非上場で、世界で25を超える拠点で事業を展開。顧客は、中央銀行、政府系ファンド、大手企業、金融機関、保険会社、資産管理会社から個人まで多岐にわたります。フィデリティ投信はフィデリティ・インターナショナルグループの一員です。
実は“看板倒れ”でない東証の市場再編
プラスチック問題の解決が求められる消費財メーカー
日本企業のサステナビリティ(ESG)開示に関する誤解と収益機会
“壮大なるチェス盤”の再構築と高まるスタグフレーションリスク
過小評価されている日本企業のESG・サステナビリティへの取り組み© フィデリティ投信株式会社 All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング