なぜ山善の「焼肉グリル」は25万台も売れたのか 開発のヒントが面白い水曜日に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2022年09月14日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

商品の箱に「数字」を明記

 雨どいの構造をヒントに、試作機をつくってみたところ、いきなりうまくいったのである。筆者は仕事柄、商品開発の話を聞くことが多いが、だいたいこのような答えが返ってくる。「試作機をつくってもうまくいかない」「失敗を何度も繰り返して、上司に怒られた」「やっと完成しても、なかなか売れない」など。

 涙なくして語れないエピソードが山のようにあるのに、「焼肉グリル」の商品開発は“つまづき”がない。「従来のホットプレート(平面タイプ)と比べると、明らかに煙の量が違っていましたし、油の飛び散りも違っていました。ということで、『その場でXカット構造でいこうー!』という話になりました」(近藤さん)

21年9月に「XGRILL PREMIUM」を発売
たこ焼きプレートも付属

 第1弾と第2弾で「煙」と「油」を抑えた商品を投入して、売れに売れた。しかし、消費者の声は厳しいものである。「煙をもっと減らして」という指摘があったので、水面下で商品開発が進んでいたのである。第3弾「XGRILL PREMIUM」では、煙を吸い込むファンを搭載した。プレートの側面に吸気があって、ファンを動かすとそこから煙を吸い込む仕組みだ。

 筆者も試してみたところ、目視ではあるが、確かに第1弾よりも第3弾のほうが煙が少ないことがうかがえた。それは数字にもハッキリ出ていて、第1弾では煙が「約70%削減」、第2弾では「約80%」、第3弾では「約94%」である。この数字が商品の箱などに記載されているが、発売当初、表示している製品はほとんどなかった。

煙の量を比較。左が同社の既存商品、右が「XGRILL PREMIUM」
吸煙イメージ

 「『煙が少なくなりました』『抑えることができました』と言っても、イメージすることは難しいですよね。ということで、数字を記載することにしました」(近藤さん)。しかし、である。「山善のホットプレートが売れているぞー」「あれ、数字がでているな(キラーン)」となれば、「ウチもウチも」といった形で、追随するところがでてくるのではないだろうか。答え、「出てきた」のである。

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