給食大手でかつてカラオケで大成功した、シダックスの買収問題が、収束に向かう兆しが見えてきた。事態が泥沼化し、長期化するのを嫌って14日、コロワイドが協業の提案を撤回したことが明らかになったからだ。
改めてこれまでの経過を振り返ってみよう。シダックス創業家である志太家の意向に基づいて、有機・無添加食品通販大手のオイシックス・ラ・大地が8月30日に、投資ファンドのユニゾン・キャピタルの保有するシダックス株式の公開買い付け(TOB)を開始。ユニゾンは、シダックス株の27.02%を保有している。
ところが、シダックスの取締役会は9月5日、このTOBに反対の意向を示し、オイシックスによる買収に待ったを掛けている。シダックスの取締役6人のうちで、代表取締役会長兼社長は、創業家の志太勤一氏。また、創業者で取締役最高顧問の志太勤氏も、創業家である。
残り4人の取締役のうちの1人は、ユニゾン代表取締役の川崎達生氏。
利害関係者である、志太父子と川崎氏を除いた3人の取締役が協議した結果、オイシックスの買収に反対を表明した。つまり、TOBに関して、創業家とそれ以外の役員の意見が分裂してしまっており、お家騒動の様相を呈している。
ユニゾンは6日、シダックスの賛同が得られるかどうかと、インサイダー取引に当たらないかを検討して、TOBに応じるかを決めると慎重な姿勢を示した。
シダックス取締役会がTOBに対して反対した背景には、買収を希望する競合他社の存在があったとしていた。その競合とは、外食大手のコロワイドであったことが、7日に明らかになった。
コロワイドというと、創業家の意向を汲んだ、大戸屋への敵対的TOBが記憶に新しい。「キャベツを工場で切ろうがお店で切ろうが味は同じ」とセントラルキッチンを活用する合理化を打ち出したコロワイドの野尻公平社長と、「キャベツは店で切った方がうまい」とあくまで店内調理を貫く窪田健一・大戸屋前社長との論戦は、見ごたえがあった。
今回、取締役会の同意を得ないで、創業家の意向を汲んで買収しているのはオイシックスだ。オイシックスがシダックスに対して敵対的TOBを行っているという異例の事態となった。しかし、コロワイドが引いたとすれば、競合他社がなくなり、シダックス取締役会としては比較検討の相手がなくなった。オイシックスがTOBを進めても、インサイダー取引に当たらないだろう。
シダックスはかつてカラオケチェーンの最大手であったが、今はカラオケ事業を売却して、祖業である給食をはじめ、車両運行、公共施設の運営などの事業を行っている。
コロワイドはそのうち給食などのフードサービスのみ、買収を含めた提案をしており、シダックスの全事業を傘下に置きたいとは考えていなかった。
従って、オイシックスとコロワイドは、シダックスに期待する協業のスタンスが異なっていた。
それに対して、シダックス創業家は東京地裁に、ユニゾンが株をオイシックス以外の第三者に売却しない旨の仮処分を申請。仮処分命令が9月1日に出され、2日より効力が生じていると、オイシックスが7日に発表した。
どうして、ここまでシダックスのM&Aはこじれてしまったのか。シダックス、オイシックス、コロワイド、ユニゾンの幹部はそれぞれ何を考えているのか。
シダックスのM&Aを巡る諸事情を探った。
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