高級車の盗難はどうして防げない? 特定の日本車ばかりが狙われる理由高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)

» 2022年09月19日 14時55分 公開
[高根英幸ITmedia]

日本の駐車場環境の悪さも盗難しやすさに影響

 日本は国土に対して平坦な土地が少なく、建物や駐車場に使える割合が少ないことから、土地代は割高(といっても近年は諸外国の方が不動産は高騰しているが)であり、自宅に駐車スペースを確保している世帯は限られている。

 そのため戸建住宅を購入する経済的に余裕のある世帯でも、クルマにはお金をかけても駐車場は自宅敷地内のカーポートというケースが珍しくない。シャッターやゲートで仕切られてもいない状態で、高級車が止められている状態は、窃盗犯にとっては「持っていってください」と言われているようなものなのかもしれない。

 何のハードルもなく高級車にアクセスできるのは、おそらく日本くらいなのではないだろうか。それくらい日本人はクルマにお金をかけている印象だ。都市部の地価が高騰して一戸建ての価格が上昇し、住宅の価格に応じた価格のクルマを所有しているから、こうした環境となったのだろう。

 もちろん自分の財力で購入しているのであれば、どんな住環境でどういうクルマに乗るのも自由だが、海外では財力によって乗れるクルマが定まってくるようなヒエラルキーが日本より厳格だ。日本は逆に乗り回すクルマがステータスとなってヒエラルキーを形成している感がある。

 海外では道路上に保管しているクルマもあるが、高級車はそれなりの環境で保管されており、他人がすぐに近付くことは難しい。治安が悪いだけにセキュリティはより厳しくなっているのだ。

 今後日本でも引越しやリフォームの際には、クルマを盗み出しにくくする対策を講じることも必要だろう。ディーラーも車両保険の加入を勧めるだけでなく、そうしたアドバイスまですることで差別化を図れそうだ。

建売住宅が並ぶ住宅街では、周りのお宅よりいいクルマに乗りたいという自己顕示欲からか、高級車を所有するオーナーも少なくない。しかしそんなオープンな駐車スペースに高級車を保管するのは、盗まれやすい環境を自ら作っているとも言える

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